国内

「他人の不幸は蜜の味」は脳メカニズム的に証明される

他人が失墜すると脳の報酬系が活動することが証明されている(写真/アフロ)

「悪口」は英語でいうと、「verbal abuse」。直訳すると「言葉の虐待」となり、非常に怖い言葉ともいえる。

 東京大学薬学部教授で、近著に『できない脳ほど自信過剰 パテカトルの万脳薬』(朝日新聞出版)がある、池谷裕二さんは、「人間は悪口に慣れることはありません。むしろ心の痛みに敏感になっていく」と言う。

「韓国の論文に、悪口を言われ続けると、脳の前帯状皮質と扁桃体の結束が強くなったとの報告があります。前帯状皮質と扁桃体は、恐怖や不安、好き嫌いなどの原始的な感情を司る領域です。例えば針で体を刺したとき、『痛い』と感じるのは、この部分が反応しているからで、悪口を言われたときも同じような反応が見られます。つまり針の痛みと、心の痛みは同じといえます。

 普通だったら、人間は不快なことに慣れていく。『この部屋暑いね』って思っていてもしばらくすると慣れるでしょ? でも痛みは慣れるどころかもっともっと痛みを感じていく。腰が痛い、肩が痛いと言って病院へ行っても、患部はどこも悪いところがない、ということがありますよね。それは脳が勝手に痛がっているということ」(池谷さん、以下「」内同)

 悪口も同じで、会社の同僚やママ友に、自分がターゲットにされた場合、転職や引っ越しなど環境を変えても心に痛みが残ってしまうという。

◆悪い噂は良い噂の2倍広まる

 そうした心の痛みを誰しもがわかっていながら、ついつい悪口や噂話をしてしまう。それは、2014年に『ケルン大学』(ドイツ)のホフマン博士らが、18~68才の男女1252人を対象に実施した調査で明らかになった。

「朝9時~夜9時の間に、ランダムに5回、対象者のスマホに合図を送り、過去1時間にモラル行動(善行)や、反モラル行動(悪行)を行ったり、巻き込まれたり、あるいは見聞きしたりしたかを報告してもらったんですが、その結果、何らかの形でモラルに関係した行動に接したという報告が全体の29%に上りました。

『自分が行った行動』の回数に着目すると、善行が悪行の2倍以上だったんですが、他人の行動について『見かけた回数』や『受けた回数』は、善行と悪行がほぼ同数。要するに、自己申告では善行が不自然に多かったんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
外交ジャーナリスト・手嶋龍一氏(左)と元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が対談
【手嶋龍一氏×佐藤優氏対談】第2フェーズに突入した中東情勢の緊迫 イランの核施設の防空網を叩く「能力」と「意志」を匂わせたイスラエル
週刊ポスト
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン