ここには2つの可能性がある。1つは自分が悪いことをしたと言いづらく、嘘をついた。もう1つは自分が悪いことをしたことに気づいていない。例えば視覚障害の人が近づいてくるのに気づかず、エレベーターの扉を閉めてしまった、満員電車で自分の鞄が周囲の邪魔になっていることに気づかず乗り続けていた、などの場合のように。
「調査結果をもっと見ていくと、他人から『聞いた回数』については、悪行が善行の約2倍になりました。つまり悪い噂は良い噂よりも広まりやすいというわけです。ぼくたちの研究会でも、『あの人、いい発見したらしいよ』という話も伝わってきますが、でもそれ以上に回ってくるのは『○○さん、奧さんと別れたらしいよ』とか『研究で不正したらしいよ』といった話の方が数が多いです」
他人の不幸は蜜の味――実はこれ、脳のメカニズム的に証明されている。
「気持ちよさや幸福感といった快感をもたらすのは『報酬系』と呼ばれる脳部位の活動によるものです。性的な快感だけじゃなく、男性であれば美人に見つめられても活動しますし、買い物依存症の人は買い物をするとき、クラシックが好きな人は名曲を聴いてるときなどに『報酬系』が反応します。
他人の不幸を喜ぶなんて、一般には醜い心だといわれ、そういう卑劣な感情が自分に宿っているなんて認めたくないかもしれませんが、他人が失墜すると確かに脳の報酬系が活動することがわかっています。それは動物の長い進化の過程で『仲間を蹴落としてでも自分の遺伝子を残したい』と願う自己保存の本能が育まれたからかもしれません」
※女性セブン2017年6月15日号