小笠原:そして穏やかに亡くなって、家族の寝顔を見てからあの世に旅立つ。だから介護する家族のかたには、つきっきりで生きているか死んでいるかを心電図モニターのように見ているのは、ある意味、患者さんへの虐待ですよ、と言っています。
室井:なるほど。
小笠原:ただ、病院が心電図モニターで管理するのは仕方がない面もあるんです。家族が病院に来て亡くなっていることに気づくと、「放っておかれた」と訴えられますから。病院は家族にお別れをさせるのが務めと思っているところがあるので、ピーッと心肺停止になったら、家族が来るまで心臓マッサージをして、1時間でも2時間でも、体が温かい状態を保つこともあります。
室井:そんなことをするんですか。
小笠原:ぼくも病院勤務時代にやっていましたが、そうすると、心臓マッサージは強く押すので、胸の骨がボキッ、ボキッと折れるんですよ。
室井:もう誰のためなのか、わかりませんね。
小笠原:それでも家族から苦情が出ない医療をやらざるを得ない。そういうつらさが病院にはあります。ぼくたちは在宅ホスピス緩和ケアを行うので、患者さんの痛みと苦しみは取ってあげて、ご家族には「寿命が来たんだから、『旅立ちだよ』って送り出してあげましょうね」と言います。そうやってご家族のかたが心の整理がつくようにしてあげる。
【information】
小笠原文雄先生が7月17日、「なんとめでたいご臨終の迎え方」をテーマに、東京・小学館で講演会を開催します。注目を集める「在宅医療」の奇跡と「いのちの不思議」についてお話しいただく予定。詳しい内容はhttps://sho-cul.comに。
※女性セブン2017年7月13日号