今や大阪に看板だけが残る「渡辺」発祥の地。撮影/森岡直浩
名字のルーツには、【1】地名、【2】地形・風景、【3】方位・方角、【4】職業、【5】下に「藤」──の5大潮流があり、日本人のほとんどが当てはまる。
人数の多い名字のベスト5は佐藤、鈴木、田中、高橋、渡辺だが、このうち「佐藤」は左衛門府に務めた藤原氏の末裔であり、【5】のパターン。「鈴木」は熊野の神官が名乗ったのがはじまりで、紀伊半島で見られる“藁塚(わらづか)”を“すすき”と呼んだのが語源であり、ルーツの分類では【2】地形・風景と言える。「田中」は上記の通りで日本中にルーツがあり、地名と地形の両方がありそう。
「高橋」は文字通り古代に奈良県にあった「高い橋」がルーツで、これも【2】地形・風景に当てはまる。高橋氏は古代豪族で、朝廷の料理番を務めた家柄だ。おもしろいのが「渡辺」で、いまや全国に広がっている一族だが、ルーツは大阪の一地名で、今も発祥の地には看板だけが残っているという【1】のパターン。この一族も水軍で知られた古代豪族で、操船技術に長けていたために全国に広がったとされる。