臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、安倍首相の答弁と麻生財務大臣の仕草の関係性について。
* * *
2日間に渡る国会の閉会中審査が終了した。国民に丁寧に説明すると言っていた安倍晋三首相だったが、蓋を開けると丁寧なのは言葉使いと態度だけ。どこを向いても、「加計学園」問題に絡んだ疑惑は、ますます深まったという声ばかりだ。
画面に映る安倍首相の顔は、瞼が腫れて表情も冴えず、顔色もイマイチ。少し前までの勢いや歯切れの良さはない。表情や姿勢を見ただけでも、支持率が高かった頃とは雲泥の差だ。強気の時の安倍首相は、身体を起こして頭を上げ、背筋を伸ばして肩を張り、堂々とした姿勢で相手に向き合う。壇上に置かれた書面を見ながら発言する時さえ、肩を丸めることはない。何度も顔を上げ、余裕しゃくしゃく、相手や周りの反応を確認する。
ところが今回、頭を高く肩を張った攻めの姿勢は見られない。まっすぐ立っていても、どことなく肩が内側に入っているようで消極的な守りの印象。すると、加計学園が事業主体だと知ったのは「1月20日」と言い始めた。追求されると、壇に両手をつき説明するのだが、視線は下を向いたままで、なかなか顔が上がらない。
過去の答弁との整合性を問われると、書面を読みながら少しずつ身体が前のめりになり、顔が書面に近づいていく。このままいったら、マイクより首相の頭が下になる…というのは大げさだが、それぐらい頭が下がっていたのだ。つじつま合わせに必死な感じが、その様子からも伝わってくる。周りを見る余裕はもうない。
野党議員に声を荒らげ指をさし、印象操作だと連呼していた頃が嘘のようだ。以前は胸の辺りで手を組み、組んだ指を頻繁に動かすという仕草で、かなり強いイライラや不満を露わにしていた首相だが、この答弁中、手が組まれていたのはお腹の辺り。組んだ手の高さは不満の大きさと比例するも言われるが、手は前より下がり、指を動かす頻度も減っている。だが、イライラ度合いが減ったはずはない。野党議員だけでなく国民が注目しているこの審査、感情的にならず、落ち着いて丁寧にという意識が強かったのだろう。
答えに窮するような質問には、立ち上がり方も話し方もゆっくり。山本地方創生大臣が首相に代わって長々と答弁、「出てけ」と怒号が飛んだ時も、席から動かなかった安倍首相。ところが「加計を白紙に」と言われると、松野文科相が答え終わると同時にサッと出てきて、早口で答弁する一幕も。それまでにないスピード感から、やっぱりお友達は大事なんだ、という印象は拭えなかった。