おふたりとも実に元気だ。よく笑い、時々怒り、よく話す。ともにひとりで生活をしている。佐藤愛子さんは女性セブンの連載をまとめた『九十歳。何がめでたい』が90万部を突破し、ベストセラーランキングを席巻中。冨士眞奈美さんは『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)で演じたアメリカ帰りの元女優役が話題を呼んだばかりだ。実はこの2人昔からの顔なじみ。そんな2人だからこそ対談も、佐藤の自宅でくつろいだ雰囲気でスタートした。
冨士:今日、先生のお宅の玄関に立ってびっくりしました。「佐藤愛子」ってものすごく大きい表札、「いいのかしら」と思って。
佐藤:私だってあんなに大きくしたくなかったんだけど、家を建てた人が勝手にあの大きさにしちゃったのよ。亡くなった上坂冬子には、女の一人暮らしなら、もうちょっとひっそり、「佐藤寓」とかするものじゃないか、ってさんざん言われました。でも大きい方が、訪ねてくる人にはすぐわかるからいいじゃない。
冨士:でも悪い人も呼びません?
佐藤:悪い人なんて、来たってどうってことない(笑い)。
冨士:私、先生から初めておはがきいただいた時、お名前があんまり大きいので大笑いしちゃったの。「佐藤愛子、どうだ」みたいな(笑い)。自分も真似してるの。だって、気持ちがいいんですもの。先生は、こちらへいらしてもう60年ですか。
佐藤:今の家に建て替えて20年ぐらいになるかな。
冨士:気持ちいいですね。お庭に木がいっぱいあるのがほんとうにいい。
佐藤:夏向きの家です。冬は寒いのよ。冨士さんは、お掃除は自分でなさるの?
冨士:お掃除はしません。10日にいっぺんぐらい、ご近所の奥さんに掃除機をかけに来てもらうんです。
佐藤:私も掃除機は嫌い。あんな不愉快なものはないわね。重いし。箒がいいですよ。
冨士:私も、お手洗いや風呂場とか、人に見せたら恥ずかしいところは自分でやりますけど、掃除機は人にお願いしています。というのも、私の家は小さいんですが3階まであって。階段から落っこちちゃいますから。
佐藤:じゃあ、階段を上がるのは大変でしょう。
冨士:リハビリだと思って、よろよろしながら1歩ずつ上がってます。
佐藤:それはすごい。じゃあ、鍛えてるわけね。
冨士:こんなきれいなお宅じゃないですから。各階、雨漏りで(笑い)。ところで先生、少しお痩せになりました?