近年、家や車、洋服といった“モノ”を「所有」せずに、人と分け合って使う「シェアリング」が広まっている。2020年に開催される東京五輪を前に、一般人同士が空き部屋を貸し借りする「民泊」が話題になったが、これもシェアリングの1つ。
もともと欧米で生まれたシェアリングは、日本でも若者を中心に利用者が増えている。シェアの内容は、大きく分けると、場所・空間、移動、モノ、資源などがあり、購入費や維持費がかからずお得にモノが使えたり、近年では一般人がスキルや経験などこれまで対価が払われなかったことを“シェア”することで金銭を得るなど、その形は多種多様だ。
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー・原田曜平さんは「流行の背景には、SNSの普及と経済的な困窮がある」と説明する。
「ヨーロッパの失業率は高く、米国でも若者の就職が困難な状況です。日本経済も回復したとはいえません。経済的に困窮した若者と、物を買わずに当事者間で安く利用しあえるシェアリングの相性がよかったのでしょう。さらにツイッターやフェイスブックといったSNSによって、世界的に広がっています」(原田さん、以下「」内同)
若者に限らず、ここ数年で私たちの生活に身近になったシェアリングだが、ふと疑問なのはレンタルとシェアの違い。
「レンタルは企業にお金を払って利用しますが、シェアリングは企業を介さずに個人が直接やりとりする点で異なります。
ただし、日本ではほかの国と違い、企業が提供するレンタルサービスも含めてシェアリングと呼んでいます。米国のシェアハウスでは、個人が共同で家を借りて家賃を折半しますが、日本では個人がそれぞれ不動産会社と契約して部屋を借りる形態をシェアリングといいます」
個人間でやりとりする方が、よりお得に貸し借りできるが「日本に、厳密な意味でのシェアリングが根づくのは難しい」と原田さんは言う。
「良くも悪くも、日本人は他人に対して警戒心が強い国民です。個人間でのやりとりでトラブルが発生するよりも業者がいるほうが安心、と、知らない人とやりとりすることへのハードルが高い。日本の法規制が厳しいことも影響しているでしょう。民泊の規制緩和が進んでいますが、それでも海外に比べるとまだまだです」
“日本仕様”のシェアリング、今後の動きが注目される。
※女性セブン2017年10月26日号