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「#自殺希望」が癒やしとなって生きられた女性の告白

 益子さんのいうように「#死にたい」などと呟くことが癒しであり、生き延びるための手段だったとすれば、今回、座間の事件で亡くなった被害者の心境が、余計に理解しづらくなる。確かに容疑者の供述によれば、被害者の誰一人もが本当は死にたいとは思っていなかった。ならば、それでも「殺してあげる」という容疑者と会ったというのは、「#死にたい」と言うけれど本当は死にたくないという思いと矛盾が生じるのではないか。

「容疑者は、私たちのような自殺志願者のフリをして、被害者たちに近づいたと報じられています。実際に、SNSで知り合った自殺志願者がオフ会をやることもある。そこには少なからず、体目的、金目的の参加者もいるんです。容疑者のような風俗関係者がいることもあった。彼らのせいで、更に病んでしまったり、本当に自殺してしまった人もいます。

 容疑者の場合は、自殺の方法などについて詳しいという”虚像”を相手に見せることに長けていたように感じます。自殺志願者の間では、死ぬ方法や薬物の効能などに詳しい人が、話題の中心になる場合も多い。私のネットの友人も、容疑者の”死にたい”というアカウントとメッセージのやり取りをしていて、容疑者のことを”信頼できる人”と話していました」(益子さん)

 このように、SNS上で自殺に関する情報を共有したり発信することについて、日本政府は今回の事件を受けて規制を検討しているという。「言論封殺につながる」などの指摘もあるが、ある程度の監視についてはやむを得ないとも個人的には思うし「#死にたい」などといった書き込みに対して、自動的に「救済機関」の案内が送られるといった手法については、どれほどの結果が出るかはわからないが、やる意味はあるのではないか。

 規制はやむを得ないし、ある程度の効果が見込めるのではとの見解に対して、益子さんは、そんな規制だけは欲しくないと言う。

「むしろ、死にたいとつぶやけなくなることの方が怖いと思いませんか? 今回の事件は多くの不幸が重なって起こってしまいましたが、死にたいという気持ちが可視化されているうちはまだいい。規制で、その気持ちすらも吐露できない環境が作られてしまうとすれば本当に多くの自殺者が出てしまうかもしれない。また、見えない場所でしか吐露できなくなったら、それを盾に、容疑者のような残虐な思想の持ち主が弱者を食い物にしやすくなる」

 彼女たちのことを「かまってほしいだけじゃないか」「面倒臭い」と疎ましく思い、だからこそ規制すべき、という意見もあるようだが、益子さんの見解は全くの真逆だ。

「私たちは確かにかまってほしいのかもしれないが、みんなにかまって欲しくはない。同じような気持ちの人たちと、やんわり繋がっていればそれで良い。ネット上だからといって、私たちに暴言を吐いてくる人たちもいますが、現実世界ではそんなことはあり得ない。電車に乗っていて、リストカットがある女性を見つけて”メンヘラ女め”と絡んでくる人はいない。本当にかまってほしいのは、私たちにかまってくる人々なんじゃないかと……」

 殺人事件史上類を見ない形で行われた犯行、理解できぬ被害者らの心境、そしてSNSをめぐる新たな社会問題とされつつある今回の騒動。「#自殺願望」「#死にたい」とつぶやくことによって生き延びている人たちのことを知らないまま社会を測っても、解ることは少なく、見えてくる事実も多くはないのだ。

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