「腎機能が低下すると、メッセージ物質であるエリスロポエチン(エポ)が減って赤血球が作られにくくなるため、貧血になる傾向があります。同様に骨を丈夫にする活性化ビタミンDも減るので骨粗鬆症などを招きます」
腎臓を摘出すればさらに危険なのではないか。腎不全、腎臓がんなどで2つある腎臓のうち、1つを切除するケースは少なくない。黒尾教授は「残された腎臓の状態によってメッセージ機能への影響は大きく変わってくる」と解説する。
「高齢者は老化や病気によりネフロンという腎臓の機能単位が減りがちです。腎機能の低下した人が、腎臓がんなどの理由で腎臓をひとつ切除すると、臓器間ネットワークに影響が及び、合併症など様々な不調を起こす可能性がある」(同前)
腎臓は他の臓器からのメッセージを受け、血中のリンの濃度を調整している。
「リンは足りなければ様々な病気を引き起こす重要な栄養素ですが、多すぎると老化を加速させてしまう。腎臓がひとつになると、リンを尿中に排泄する能力が低下します。すると、余分なリンが血管を石灰化して動脈硬化を起こしたり、全身に炎症反応や細胞障害が発生して老化が進む怖れがあります」(同前)
ただし、残された腎臓が健康である場合、大きな影響はないと見られている。「生体移植」では、重病で臓器の機能回復が見込めない患者に対し、ドナーから臓器を移植する。