NHKスペシャルで放送中のシリーズ『人体 神秘の巨大ネットワーク』が大反響を呼んでいる。全8回にわたる大型企画だが、最大の驚きは「臓器間のやりとり」が明らかにされたことだ。つまり、これまでの常識である「脳=司令塔として各臓器に命令を出す」という考え方ではなく、各臓器が独自にそれぞれのメッセージを携えた物質(メッセージ物質)を放出し、血管や神経を通じてほかの臓器や細胞などと直接やり取りをする「横のつながり」があると伝えたのだ。
となれば、各臓器は人間というマシンを円滑に動かすいわば「歯車」と考えられていた常識は覆され、各々が補完しあう関係の単なる「部品」とはいえないということになる。
だが、そこで誰もが思い浮かべる「疑問」が番組では説明されていない。他人の臓器を提供されたら体内は大混乱にならないか? ということだ。
東野圭吾の小説『変身』では、脳移植された登場人物の性格が時間の経過とともに変化した。これはあくまでSFの話だが、もし臓器が脳のようにメッセージを発するならば、「他人の臓器」が移植されたときに体内は大混乱になってしまうのではないかと想像してしまう。
専門家は「その可能性はない」と答える。番組に出演した自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部の黒尾誠教授が解説する。