E231系に替わり山手線の主力となりつつある新車両の235系
とはいえ、鉄道車両が置き換えられる理由は老朽化だけではない。社会環境が大きく変わり、その変化に合わせて車両を改造するケースはある。例えば、以前には一般的にバリアフリーという概念が希薄だったために車両内に段差があったり、車イスの乗客のためのスペースがなかったりした。
また、通勤時間帯の混雑を緩和するために、多くの人が乗車できるようにイスを折り畳めるような改造が施された車両もある。
近年では、線路への転落防止のためにホームドアが設置されるようになっている。ホームドアを設置すると、車両のドアもホームドアの位置に合わせた設計にしなければならない。ホームドアに対応するべく、東京メトロ日比谷線では13000系という新車両を投入したほどだ。
鉄道車両は一両で約1億2000~3000万円もする。山手線は一編成11両だから、一編成を置き換えるだけでも約14億円。全編成を置き換えるとなると、膨大な金額になる。いくら省エネで乗り心地が向上しているとはいえ、容易に置き換えられるものではない。
新車両のE235系に比べればE231系は古い車両かもしれないが、老朽化しているとまでは言えない。まだ使い続けられるレベルの車両なのに、新しいE235系に置き換える理由は何なのだろうか?
「山手線は当社でも最重要線区であり、また新たな検査技術を検証することに最適であったため、山手線へのE235系の投入を決定しました。老朽化、輸送力増強、ホームドア対応が置き換えの理由ではありません」(JR東日本広報部)
山手線で頻繁に新車両が登場するのは、最先端技術を試そうとするJRの姿勢が色濃く反映された結果でもある。
『シン・ゴジラ』でゴジラを倒す兵器として活躍したE231系だが、山手線を走るE231系が見られるのは、もうすぐ映画のなかだけになる。もしあと2~3年、映画制作が遅かったら、代わりにE235系が無人在来線爆弾として活躍していたかもしれない。