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2017.11.19 16:00 週刊ポスト
阿修羅像と同じ漆芸の伝統技法で造られたドラえもんアート

渡邊希作『スリーディー』 (c)Nozomi Watanabe (c)Fujiko-Pro
「あなたのドラえもんをつくってください」とのメッセージを受け取った28組のアーティストによる新作を集めた「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」。漆造形家の渡邊希さんによる作品『スリーディー』は、漆、麻布、乾漆でドラえもんとドラミの兄妹団らんを表現したものだ。本展には他にも、異次元へ吸い込まれそうな「漆黒」世界にタイムマシンのイメージを重ねた大型作品『タイムドラベル』も出展している。渡邊さんが同作について語る。
* * *
このドラえもんとドラミちゃんは漆でできているんです。粘土の塑像を原型にして、その上に漆で麻布を張り重ねて成形する、「乾漆(かんしつ)」という技法で造りました。奈良・興福寺の国宝・阿修羅像にも用いられている漆芸の伝統技法です。
1万年以上も前から身近にあった漆が、今もこうして日常の中に生きている。皆さんの心に宿るドラえもんを通じて、忘れかけた漆の魅力を再発見してもらえる機会になればと切に祈っています。
穴の開いた朱塗りのドラえもんのように、乾漆を切り抜く「透かし造形」をよく造っていて、“立体物は外身のデザインだけでなく、実は内側を見つめている”と気付かせてくれる仕掛けなんです。3体とも表情を入れていないので、思い思いのドラえもん像を投影して作品との対話を楽しんでほしい。
5歳の娘はハロウィンでドラミちゃんの仮装をするほど作品に没頭して、制作中は先生としてドラえもんの世界観を教えてくれました。私にとっても子供時代から変わらず夢を与えてくれる存在。現代アートの美術展で領域を超えて漆を知ってもらえる機会を得られたことが、ドラえもんからの素敵な贈り物だと感じています。
●わたなべ・のぞみ/1981年、北海道生まれ。漆造形家。乾漆技法をメインに作品を制作。その素材感を生かした「漆のある空間」を提案している。代表作に『景』(大阪・新ダイビル蔵/2015年)。北海道新聞でコラムを連載中。
◆「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」は2018年1月8日まで、森アーツセンターギャラリーで開催(東京・六本木ヒルズ)。【開館時間】10~20時(火曜は17時まで)【休館】会期中無休。
※週刊ポスト2017年11月24日号
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