ライフ

阿修羅像と同じ漆芸の伝統技法で造られたドラえもんアート

渡邊希作『スリーディー』 (c)Nozomi Watanabe (c)Fujiko-Pro

「あなたのドラえもんをつくってください」とのメッセージを受け取った28組のアーティストによる新作を集めた「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」。漆造形家の渡邊希さんによる作品『スリーディー』は、漆、麻布、乾漆でドラえもんとドラミの兄妹団らんを表現したものだ。本展には他にも、異次元へ吸い込まれそうな「漆黒」世界にタイムマシンのイメージを重ねた大型作品『タイムドラベル』も出展している。渡邊さんが同作について語る。

 * * *
 このドラえもんとドラミちゃんは漆でできているんです。粘土の塑像を原型にして、その上に漆で麻布を張り重ねて成形する、「乾漆(かんしつ)」という技法で造りました。奈良・興福寺の国宝・阿修羅像にも用いられている漆芸の伝統技法です。

 1万年以上も前から身近にあった漆が、今もこうして日常の中に生きている。皆さんの心に宿るドラえもんを通じて、忘れかけた漆の魅力を再発見してもらえる機会になればと切に祈っています。

 穴の開いた朱塗りのドラえもんのように、乾漆を切り抜く「透かし造形」をよく造っていて、“立体物は外身のデザインだけでなく、実は内側を見つめている”と気付かせてくれる仕掛けなんです。3体とも表情を入れていないので、思い思いのドラえもん像を投影して作品との対話を楽しんでほしい。

 5歳の娘はハロウィンでドラミちゃんの仮装をするほど作品に没頭して、制作中は先生としてドラえもんの世界観を教えてくれました。私にとっても子供時代から変わらず夢を与えてくれる存在。現代アートの美術展で領域を超えて漆を知ってもらえる機会を得られたことが、ドラえもんからの素敵な贈り物だと感じています。

●わたなべ・のぞみ/1981年、北海道生まれ。漆造形家。乾漆技法をメインに作品を制作。その素材感を生かした「漆のある空間」を提案している。代表作に『景』(大阪・新ダイビル蔵/2015年)。北海道新聞でコラムを連載中。

◆「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」は2018年1月8日まで、森アーツセンターギャラリーで開催(東京・六本木ヒルズ)。【開館時間】10~20時(火曜は17時まで)【休館】会期中無休。

※週刊ポスト2017年11月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン