このような研究は、これまで「人間と動物の種を飛び越える行為」「動物を人間の臓器のために犠牲にしていいのか」「動物が人間に似た知能や精神を持つ可能性はないか」など医学研究の枠を超えた、倫理的、あるいは宗教的議論が重ねられてきた。

 しかし医療現場では慢性的に臓器不足が指摘されている。日本臓器移植ネットワークによれば、臓器移植希望の登録者は昨年末で1万4000人を超えるのに対し、昨年の臓器移植件数は約340件にとどまっている。

 分野の研究が一気に加速すれば、医療技術のみならず、新しい医療に関わる議論まで大きく変える可能性がある。

 今回のNスペ「人体」のナビゲーターをiPS細胞研究の第一人者である山中教授が務めているのも深い“意味”が感じられる。臓器間ネットワークの研究と、それに伴う疑問──その先には、医療や健康というスケール以上の人類社会の大変化が待ち受けているのかもしれない。

※週刊ポスト2017年11月24日号

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