ライフ

あの美しくやさしい膨らみを「おっぱい」と名付けたのは誰か

なぜそう呼ぶのか、語源には諸説ある(写真:アフロ)

 ふと考え込んでしまう瞬間は誰にでも訪れるものである。2017年師走、コラムニスト・石原壮一郎氏の場合──。

 * * *
 こんなにお世話になっているのに、こんなに大好きなのに、なぜそういう名前なのか気にしたことはありませんでした。たいへん失礼で、たいへん情けない話です。我々男性の憧れをかき立ててやまないおっぱいは、なぜ「おっぱい」と言うのか。あの美しくやさしい膨らみは、どのぐらい昔に、誰が何を思って「おっぱい」と名付けたのか。

 人間も土地も食べ物も芸術作品も、そしておっぱいも、深く知れば知るほど、さらに好きになれるし、さらにその魅力を味わえます。今さらで本当に申し訳ない限りですが、あらためて敬意と感謝を込めつつ、おっぱいの語源を探る旅に出発するとしましょう。

 あらゆる言葉の意味・語源・由来が載っているwebサイト「語源由来辞典」では、「諸説ある」と前置きしつつ、次の4つの説が紹介されています。

1.「ををうまい(おおうまい)」が約まったとする説。

2.「お腹一杯」の「いっぱい」が転じたとする説。

3.中国春秋時代の学者王牌(おうぱい)が転じたとする説。

4.古代朝鮮語で「吸うもの」を意味する「パイ」からとする説。

 もっとも有力とされているのは1で、幕末の1859~60年に書かれた『於路加於比(おろかおい)』という文献に、おっぱいの意味が書かれているとか。さらに調べてみると、この本は笠亭仙果こと柳亭種秀によって書かれた随筆で、「乳汁をおつぱいとは、ををうまいの約(つづま)りたる語なるべく」という記述があるそうです。うっかりしていましたが、おっぱいはあのふくらみのことだけでなく、母乳を指すこともありますね。

 ここで「ををうまい」と言っているのは、乳児なのか、あるいは大人なのか、乳児がおいしそうに飲んでいる様子を大人が代弁しているのか。謎は残ります。そこはまあいいとして、仮に1が正しいとすると、おっぱいの歴史は意外に新しいものでした。文明開化によってもたらされた日本の夜明けは、おっぱいの夜明けでもあったわけです。

 2以下の説の可能性もありますけど、いずれにせよ、おっぱいという言葉の響きと字面は、あの膨らみの本質をあまりにも的確に表現していると言えるでしょう。男女問わず、たとえ大勢の人の前でも、さほど抵抗なく口にできるところも(いや、そういう意味じゃなくて)、おっぱいという言葉の素晴らしさであり偉大さです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

日米通算200勝を達成したダルビッシュ有(時事通信フォト)
《ダルビッシュ日米通算200勝》日本ハム元監督・梨田昌孝氏が語る「唐揚げの衣を食べない」「左投げで130キロ」秘話、元コーチ・佐藤義則氏は「熱心な野球談義」を証言
NEWSポストセブン
ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
女性セブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト