中長距離のトップクラスともなれば、秋は天皇賞(秋)→ジャパンカップ→有馬記念というのが、王道ともいえるローテーション。関西馬にとってはすべて長距離輸送が伴うし、その前に毎日王冠や京都大賞典を叩くというケースも多い。激戦を乗り切るためには、「疲労回復」が重要のはずだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、競走馬の疲労についてお届けする。
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結果が芳しくなかったレース後の陣営のコメントに、「見えない疲労があったのかもしれない」というものがあります。
分かったような分からぬような、便利な言い訳です。敗因がはっきりせず、そんなことくらいしか言えない場合に飛び出す言葉なのでしょうか。
疲れが敗因。そのとおりかもしれません。レースや輸送の緊張で馬に疲れがたまる。陣営は「見えるもの」として疲れを感じ取り、払拭しなくてはいけない。
疲労のサインは、飼い食いが落ちる、体重が落ちる、毛艶が悪くなるなど。下肢部がむくむこともあります。
さらに分かりやすい場合も。朝、馬房から出たがらない。さっきまで飼い葉を食べていたのに、横になるといくら尻を叩いても起き上がらない。「疲れてるから、調教はイヤ!」という意思表示です。
そういったサインがなく、元気いっぱいに見えたのに凡走すると、前記のコメントが登場するわけです。競走馬の疲れをどう取るか。いつも心を砕いています。
まずはレース間隔。オープン馬ならばレース間隔が最低でも1か月は開くからほぼ心配ないのですが、それでもGIIの後より、GIの後の方がこたえていますね。これは時計が速い遅いじゃなくて、やはり大レースの重圧を感じているのかもしれません。輸送の際は、眠ることなどできませんからね。