それでもキャリアを積んだ馬は、レースに向けて自分で体調をコントロールできるようになることがありますが、500万下や未勝利馬などはレース間隔を詰めることも多く、レースの疲労とどう向き合うかがとても重要です。
中2、3週のローテーションで1クール3走が目安。経験則だと、それ以上使うと疲れが取れにくい。季節によって疲労度が変わり、夏場は2走、逆に冬場は4走でいける場合もあります。
人間の場合、睡眠こそが唯一最大の疲労回復手段だそうです。馬は少し違いますが、よく眠れるようにということは考えます。
人間ならば風呂に入って、アルコールを飲んでぐっすり眠れるという人が多い。馬の場合、日常的に言えば、状態のいいまま、肉食動物に襲われる危険性がない馬房に入れば、横になって休みます。
だからといって何時間もずっと寝ているということはありません。やはり肉食動物に襲われるかもしれないという本能があるし、長い間横になっていると自分の体重で壊死してしまう。だから横になるのはせいぜい1時間ぐらいだと思います。
立って寝るときもありますが、声をかければびくっと耳が動いたりするので、深い眠りではないのです。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。今年は13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館新書)が発売中。
※週刊ポスト2017年12月15日号