本誌が彼らの言葉をこの事故で次女(当時7才)を失った小谷真樹さん(35才)に伝えると苦悶の表情を浮かべ、こう言葉を振り絞った。
「人の命を奪ったという事実を、彼らは本当に自覚しているのでしょうか。この5年間、娘を亡くした喪失感は少しも埋まることがありません。あの日から時間が止まったままです。しかし、彼らは事件そのものを受け入れてさえいない気がする。平然と車にも乗っているなんて…。あまりにも無念です」
交通事故に詳しい弁護士の中村亮氏によれば、無免許運転で事故を起こした者でも、その後免許は取得できるという。
「司法ではなく行政の判断なので、一定期間免許が取得できない『欠格期間』を経れば、免許を取得することは可能です。無免許で事故を起こしても、自賠責保険で被害者への賠償金が支払われます。
殺人などの刑事事件と違い、交通事故は基本的に故意ではなく『過失』という前提に立つので、死亡事故でも実刑になること自体数パーセントです。同乗者となると、ほぼ0に近い。遺族から民事裁判で訴えられても、お金がなければ慰謝料の支払いさえしないケースもある。現状、この国では交通事故被害者があまりにも法的に守られていないのです」
仮に事故で一命を取りとめても、生涯後遺症に悩まされ、仕事を断念せざるをえない被害者も多い。
にもかかわらず、加害者側の運転手や同乗者は法律や行政に守られ、再び車を運転することもたやすいのだ。飲酒運転の再犯率は8%超にものぼるという警察庁の統計もある。
今年6月、神奈川県大井町の東名高速道路で石橋和歩被告(25才)に停車させられ、ワゴン車の夫婦が死亡した追突事故の被害者遺族、萩山文子さん(77才)もこう語る。
「石橋被告やその家族からは、いまだ一切謝罪はありません。実況見分の時、彼があくびをしてニヤニヤしている姿を報道で見て、怒りと悲しみで倒れそうでした。事故以来、私は車が傍を通るだけで震えてしまうんです。それなのに、加害者は簡単に日常を取り戻してしまうなんて…。本音をいえば、石橋被告には一生刑務所に入っていてほしい」
被害者と加害者を断絶する壁は、あまりに高い。
※女性セブン2017年12月21日号