〈京都・下鴨神社。神代の昔から崇められた杜と住む。〉──12月1日の日経新聞朝刊に掲載された、分譲マンション「J.GRAN THE HONOR 下鴨糺(ただす)の杜」(京都市左京区)の広告キャッチコピーだ。鉄筋コンクリート造3 階建て、総戸数99戸で今年5月に竣工。販売するJR西日本不動産開発が説明する。
「1994年に世界遺産登録された下鴨神社の境内に建っています。『糺の森』は境内の森の名称。購入者の方には京都三大祭の一つ、下鴨神社『葵祭』の特別席観覧へのご招待などを用意しています」(住宅事業部)
今回分譲されるのは2LDK~3LDKで、販売価格は6250万~1億30万円。“世界遺産に住める”のは魅力だが、背景は複雑だ。ジャーナリスト・山村明義氏が解説する。
「下鴨神社ほどの有名神社でも、昔ほど崇敬者、支援者が集まらない現状があります。建設計画が発表された2015年は、21年に一度の『式年遷宮』の年で、浄財がなかなか集まらなかった。そこで敷地を事業者に貸し出してマンションを建てる計画が出てきたわけです」
そこで気になるのは広告に書かれた次の一文。
〈ご契約の際は、「糺の森保存会」もしくは「下鴨神社崇敬会」の終身会員になっていただくことが必須〉
崇敬会が神社への信仰が前提となる組織であるのはもちろん、保存会も社殿や式年遷宮などの行事の存続を目的とした団体(正会員の年会費は1口2000円)だ。入居者は下鴨神社への“信心”が求められるのか。前出のJR西日本不動産開発の担当者の説明。