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コンプライアンスの時代 舞台で喫煙したら怒鳴って帰る客も

表現の自由が失われ息苦しい時代に(写真/アフロ)

 今の世の中を象徴する言葉が「コンプライアンス」(法令遵守)だ。企業が法律や社会規範を守ることを意味するこの言葉が、今はテレビドラマの現場でも盛んに叫ばれている。

 俳優の中井貴一(56才)は『新潮45』(2017年3月号)に寄稿した「撮影現場の『コンプライアンス』狂騒曲」という記事で、テレビ界にこう警鐘を鳴らした。

〈テレビドラマにひとたびコンプライアンスがふりかざされると、警察の捜査をかわす逃走犯はシートベルトをきちんと締め、学校や教師にたてつく不良高校生たちはタバコも酒もやりません。そもそも私たちが創っているものは架空の世界、空想の産物です。ありもしない世界に現実のルールを持ち込んで、娯楽としての面白さがぼやけてしまう状況は、一役者として嘆かざるを得ません〉

 そのうえで中井は、テレビをつくる側と見る側が双方に理解と努力を重ね、ちょうどよい「加減」を探る必要があると指摘する。ここでも「加減」が問題となっている。

 表現の自由が失われて、ある種の「息苦しさ」を感じるのはテレビだけではない。大和田美帆が出演した舞台では、演者がたばこを吸うシーンがあったが、その時「煙い!」と怒鳴って劇場から出て行った観客がいた。

「昭和初期の設定だったので時代を表すために必要なシーンでしたが、そのお客さんの受け止め方にショックを受けました。おかげで最近は『この舞台ではたばこを吸うシーンがあります』とロビーに貼紙がしてあります。

 この世には殺人もリンチもある。人の性格を表すには暴力的な要素も必要だし、そこから『こんな怖いものはよくない』と学ぶことが何より大切なはずです。舞台やテレビや学校からそうした要素を排除したなかで育った子供たちが、いきなり現実の世の中に投げ出される方がもっと怖い気がします」(大和田)

 ヤンキードラマで学生が紫煙をくゆらせる場面がカットされ、事件ドラマで人を殺すシーンが消える。そうした“ありえない現実”が実際に公共の電波に乗っている。

※女性セブン2018年1月4・11日号

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