「調整池を作ることに反対しているわけではありません。工事車両の搬入ルート選定が、われわれ住民にとって到底納得できるものではないからです。都に問い合わせをしたら“本来説明義務はない。説明会翌日(8月2日)には工事を始める”と言われた住民もいました。充分な説明がないまま、工事をスタートさせようとしたことにも不信感が拭えません」(西氏)
◆騒音や振動に悩まされ、窓やカーテンも開けられない
8月1日に行われた説明会で住民の不満は爆発。都に「見直し」を求めた。西氏ら住民の抗議内容は以下の通り。
●1日最大60台の大型トラックの通行による騒音は幹線道路と等しく、住宅街ではありえない。また狭い道路でのトラックの往来は子供たちに危険が及ぶ。
●地盤の緩い河川に杭を打つことへの家屋の影響。その補償も曖昧。
●高さ3mの防音壁は日光や通風を妨げる上、死角もできて防犯上危険である。
●8年間、騒音や砂埃対策として、窓を閉め切る生活が続くことが苦痛である。
「私は自宅を仕事場にして漫画を描いています。自然豊かで静かな環境だからこそ、この地に家を買ったんです。職業柄精神的にツラいことも多く、窓を開けて自然と触れることで気分転換しながら、読者に漫画が届けられているんです。
工事が始まってしまえば、一日中トラックが行き来する音や振動に悩まされ、さらには窓やカーテンも開けられず、日も差さない状況が続く。家を売ろうにも、この工事が10年近く続く以上、買い手も見つからないでしょうし、資産価値も下がります。八方塞がりです」(西氏)
そして説明会から半年が経った昨年末、都は「見直し案」を提示。だが、その内容は住民の気持ちを蔑ろにするような内容だったという。
「既存案から多少の変更があっただけで、根本は何も解決していない。私たちが提案したルートも都は“検討した”と言うが、本当に検討したのかははなはだ疑問です」(西氏)
東京都にこの状況について話を聞くと、こう回答した。
「もともと、昨年8月に着工というわけではなく、説明会で了承を得られれば工事に入っていくという予定でした。昨年7月に住民からの反対意見があることは認識しており、搬入ルートの選定にご意見と要望がございましたので、それを検討しております。昨年末、提案した見直し案は確定したものではなく、住民や近隣の学校などに意見をうかがっている段階です。より安全なルートを選び、地元にご理解の上で事業に着手したい」(東京都第三建設事務所工事第二課課長)