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かつて砂鉄採集していた奥出雲の棚田が今はブランド米栽培に

鉄師『卜蔵家』の本拠地だった追谷集落に拓かれた棚田の景観(奥出雲町)

 神話で知られる奥出雲地方は、千年以上前から受け継がれてきた製鉄技術『たたら製鉄』の町でもある。映画『もののけ姫』(1997年)に登場する“タタラ場”のモチーフにもなっている。

 そんな奥出雲地方には、国の名勝・天然記念物であるV字渓谷『鬼の舌震(おにのしたぶるい)』や、金言寺の大イチョウなど、豊かな自然が広がっている。その中でも、ひと際目を引くのが美しい棚田の風景だ。

「この棚田は『たたら製鉄』の名残で、もとは山でした。江戸から明治にかけて、山を切り崩して水の勢いを利用する『鉄穴流』という方法で、砂鉄を採取していた場所なのです」(奥出雲町観光協会事務局長・早川正樹さん・以下同)

 砂鉄を採取した跡地を遊ばせておくのはもったいないということでつくられた棚田ではあるが、もともと米づくりに適した場所だった。

「鉄穴流しで使われていた水路をそのまま利用できたこと。標高300m以上の山間地にあり、日当たりも抜群だったこと。昼夜の寒暖差が大きく、水と土壌にミネラル分が多く含まれていたことなど、米づくりに最適な環境条件がそろっていたのです」

 棚田が奥出雲の仁多郡にあることから『仁多米』と名づけられたこの米は、“東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米”と称されるほどの日本を代表するブランド米へと成長を遂げた。

「豊かな大地に育まれているので、炊くとツヤツヤ、モチモチしており、冷めても甘みがしっかりと感じられて、とってもおいしいんですよ」

 たたらの名残は米だけではなく、鍛冶・鍛造の伝統も受け継がれている。

 奥出雲町に隣接する安来市には、今も伝統を受け継ぐ工房があり、その鍛治技術を生かして、現代の暮らしに合った鉄製の燭台や花器などを生み続けている。

 また最近は、日本刀の形や神秘的な輝きに“萌える”刀剣女子も増えており、日本刀とたたら製鉄にまつわる展示品の数々が見られる『和鋼博物館』を訪れる女性も増えている。

 奥出雲までは出雲大社から車で約90分。この春、鉄を巡る歴史を感じに、足を延ばしてみませんか?

撮影/浅野剛

※女性セブン2018年2月8日号

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