ライフ

児童虐待を描き続けた漫画家が語る「暴力の依存性の強さ」

曽根富美子・著『子どもたち!~今そこにある暴力~』より

 子供への虐待、暴力事案は年々増え、警察が児童相談所に通告した子どもの数は2016年で5万人以上、2017年は上半期だけで3万人超と、ともに過去最多を記録した。数字は増えているが、“虐待の本質”は昔から変わっていない。1990年代前半から、虐待を受けた子どもたち、そして虐待してしまう親を描き続けているのが、漫画家・曽根富美子さんだ。彼女の作品のほとんどに、「虐待」「暴力」に晒された人間が描かれる。読む側にもある種の覚悟を求める作風には、作家のどのような思いが込められているのか。曽根さんに聞いた。

 * * *
──『死母性の庭』『子どもたち!~今そこにある暴力~』『パニック母子関係』など、虐待事案に関する綿密な取材を基礎にした作品を多数描かれています。虐待、暴力をテーマにした作品を描こうと思った動機は何ですか?

曽根:もともと私自身が被虐待児であったこともあると思います。父は酒乱で、とにかく父から逃げなければ危険でしかない日常。母はそんな父との生活の苛立ちを、私にぶつけていました。3~7歳くらいは母から毎日のようにぶたれて過ごしました。

 両親から愛情のような温かさを感じたことはありません。そんな自分の家族関係が、私の作品の根幹になっていると今は思います。無意識のうちにテーマとして選んでいた、という感じです。

 初めは“子どもを愛せない母”という存在に興味がありました。30年くらい前のドキュメンタリー番組で、「頭が良く成績優秀な女性が、結婚し三十過ぎで初めて正解のない子育てを経験し、誰からも“良い点”がもらえない。そのことに苛立ち子どもを叩き始め、自分では止められなくなった。そして夫に助けを求めた」という内容でした。とても印象に残り、『死母性の庭』を描くきっかけになりました。“正解のない子育て”に迷い苦しみ、我が子を虐待してしまう母親──その心情を描いてみたかったのです。

関連キーワード

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン