国内

完全違法のキャッチ行為 その先には組織犯罪被害が待つ

キャッチは被害者にとっても組織犯罪の入口

 客引き、いわゆるキャッチをめぐるトラブルが絶えない。店の前で行われる呼び込みではなく、勧誘する店舗からは離れた場所で通りがかる人に声をかけ、強引な勧誘やぼったくり被害などとのつながりが深いキャッチについては、トラブルを未然に防ぐため禁止する条例を制定する自治体が増えている。今では主な都市ではほぼ違法となったキャッチだが、それでも存在し続け、さらに無軌道な存在になりつつある。ライターの森鷹久氏が、組織化されないことで悪質さが増したキャッチグループについてレポートする。

 * * *
「奴らはとんでもない連中。そもそもどうやって毒物劇物に指定されている硫酸を入手しているのか。突き上げ捜査も行われているようですが……」(警視庁捜査員)

 東京・上野の路上で風俗店のキャッチグループ同士のトラブルをきっかけに起きた乱闘で、互いのメンバーに暴行を加えたり、硫酸をかけるなどしたとして今年2月、計10名の容疑者が逮捕された。乱闘事件そのものは2015年5月のことだが、ようやく逮捕までこぎ着けた。もちろん、上野の繁華街での客引き行為そのものも違法行為だ。

 捜査員がいう突き上げ捜査とは、組織犯罪でよく行われている捜査手法のひとつ。客引きグループならば、路上で実際に声かけなどを行っている末端の人間から指示を出している人間をたどり、捜査の網を広げてグループ全体を掴むといったものだ。今回のグループも、その手法で根こそぎにしようと試みているが、組織がきちんとしていないこともあって、難航しているという。

 違法な風俗キャッチグループに所属していた容疑者ら。縄張り争いなどの揉め事が重なるうちに敵対し、犯行に及んだと見られているが、彼らをよく知る元・キャッチの遠藤一郎さん(仮名)は「タチが悪く、歯止めの効かない連中」だと、その恐ろしさを証言する。

「ご存知の通り、今ではキャッチは完全に“違法”な存在。グループを作ったり組織化するとすぐに潰されるから、最近は個人というか“フリー”のキャッチが増えています。もちろん、バックには反社(※暴力団などの反社会的勢力)やリーダー的な人物がいますが、表向きは“フリー”。だから、仁義も秩序もあったもんじゃなく、トラブルが起こると泥沼化しやすい」(遠藤さん)

 遠藤さんがキャッチとして活動した数年間の間だけでも、近しいキャッチ同士のトラブルにより誘拐事件や傷害事件が何十件も起きた。いずれも「縄張り争い」に起因するものだった。こういったもめ事によって障害が残るまで暴行を受けたり、補償金として、数百万円をサラ金から借りさせられて自己破産に追い込まれた元同僚・後輩もいるのだという。

 そこまでの事件が起きても、世間が知るような“事件”にならなかったのは、警察に届け出る被害者もいなかったったからだ。それは、キャッチ自らが「違法」であるという自覚を、各々が理解していたからに他ならない。違法行為を働いていた故の「自業自得」だとして、やられた方は泣き寝入りするしかないのである。

 一方、これだけで話が済むのなら、一般人からしてみれば「関係のない話」であり、違法行為に手を染めた連中などのことなど「知ったこっちゃない」かもしれない。しかし、彼らの無秩序、そして遵法意識の欠如は、時として一般人にも牙をむく。

 以前、筆者がレポートした「悪質キャッチの実態」にも詳しく書いたが、彼らは一般人から「ぼったくるだけ」の為にキャッチ行為を働くにとどまらない。ときには弱い存在そのものから、あらゆるものを奪おうと付け狙う。それはもう「客引き」という彼らの仕事ですらない。たんなる誘拐や略奪だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
乱戦の東京15区補選を制した酒井菜摘候補(撮影:小川裕夫)
東京15区で注目を浴びた選挙「妨害」 果たして、公職選挙法改正で取り締まるべきなのか
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト