コンビニエンスストアと鉄道会社のタッグが増えている。コンビニは大手でも、既存店の売り上げ前年割れを、何とか旺盛な新規出店でしのいでいるのが現状。そんな中、毎日多くの乗降客数を抱えて「駅」という宝庫を持つ鉄道会社との提携は、コンビニにとって大きな商機となる。
最近も、3月8日にセブン&アイ・ホールディングスが小田急電鉄との提携を発表し、今後約2年をかけて、これまで小田急グループが運営してきた駅売店や自社系のコンビニ約100店を順次、セブン-イレブンに切り替えていくことになった。
そこでまず、大手コンビニ3社の鉄道会社との提携を振り返ってみよう。
最初はセブン-イレブン。これまで北海道キヨスク(JR北海道駅構内にある販売店)、JR西日本、JR四国、京浜急行電鉄、新京成電鉄、大阪モノレール(大阪高速鉄道)、神戸電鉄の7社と提携、累計で約450店をセブン-イレブンに転換し、今回の小田急分が加わると約550店になる。セブンの提携相手の中でインパクトがあったのはJR西日本だ。
同社はJR東日本やJR東海と並ぶJRの3大企業で、セブンとは2014年に提携。JR西日本管内には1200強の駅があり、うち約550店の駅売店などを5年かけてセブン-イレブンに変えていき、新規の駅構内出店もすべてセブン-イレブンとなる。
元来、東日本に強くて西日本はやや手薄だったセブン陣営にとって、JR西日本との提携は大きい。このほかでは、今回の小田急、それに2009年に提携した京急が通勤、通学、観光、それぞれ一定ボリュームの客を擁しており、商圏としては比較的大きいといえる。
次いでファミリーマート。同社は今年2月末現在、15社の鉄道会社と提携し、ファミマ転換店は526店。これまで鉄道とのタッグといえばファミマがリードしてきたが、セブンは小田急とのタッグ分を単純に上積みするとファミマを超えてトップに立つ。
だからか、ファミマの広報室ではセブンが小田急との提携を発表した同じ3月8日、セブンを牽制するかのごとく、エクセルのデータで各メディアに鉄道会社との自社の取り組み実績表を送っている。
そのデータによると、提携鉄道会社は、西武鉄道、つくばエクスプレス、東武鉄道、京成電鉄、JR九州、相模鉄道、名古屋鉄道、多摩都市モノレール、神戸市営地下鉄、近畿日本鉄道、横浜市営地下鉄、東京都営地下鉄、名古屋市営地下鉄、仙台市営地下鉄、京都市営地下鉄となっている。最初は2008年の西武との提携、直近は2015年の京都、仙台の各市営地下鉄だ。
ファミマが鉄道会社と縁が深いのは、もともと鉄道会社との提携を得手としていた、旧am/pmジャパンを2010年に買収したことが大きい。提携店舗数としては、JR九州管内の188店、近鉄管内の100店、西武管内の59店が上位3社で、提携する鉄道会社数は15社と多いが、ここ2年は提携が拡大できておらず、セブンに猛追されてきた格好だ。
そしてローソン。同社は東急電鉄、東京メトロ、西鉄、大阪市営地下鉄等と提携しているが、セブンやファミマに比べると見劣りがする。ただ、鉄道会社との提携は東急電鉄とは2005年に実現し、コンビニ大手3社の中で最も早かった。その後、東京メトロと2015年に提携し、同社管内の駅売店140店のうち、約50店を3年かけてローソンに切り替え、ほかの売店も順次、切り替えていくという。
特に平日の乗降客数の多さからいって、この東京メトロとローソンのタッグはセブンやファミマに比べてアドバンテージはある。それだけに、ローソンが東京メトロとの提携を勝ち取る過程では、セブンやファミマに比べて破格の好条件を出したとも言われたほどだった。
ローソンとしては、どんな条件でもいいからライバルコンビニには奪われたくなかったのだろう。最近では昨年、大阪市営地下鉄と提携。同鉄道管内のコンビニはそれまで、ポプラとファミマが受け持っていたが、新たにローソンが獲得し、管内の44店が今後、ローソンに変わっていく予定だ。