芸能

立川談笑の改作『らくだ』 驚愕のロジックで後日談へつなぐ

談笑ならではのロジックに脱帽

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、改作落語で知られる立川談笑による『らくだ』改作と後日談における、談笑ならではのロジックの存在についてお届けする。

 * * *
 立川談笑と言えば改作落語。たとえば2月14日の「談笑月例独演会」(東京・博品館劇場)で演じた彼の『鰍沢』はこういう噺だ。

 吉原の月の兎花魁は平吉という客に無理心中を仕掛けられたが、何とか逃れて甲州の山奥で猟師の熊蔵と結婚し、お熊と名乗って平穏な日々を過ごしていた。ところが大雪の晩、道に迷った旅人を迎え入れてみると、執念深く月の兎を探していた平吉で、この男が熊蔵を殺そうと玉子酒に毒を入れ、熊蔵はそれを飲んでしまう。お熊は、無理やり江戸に連れ戻そうとする平吉に銃を向けて追い出すが、平吉は大声で「月の兎がここにいるって役人に届けてやる!」と捨て台詞。それを聞いたお熊は銃を持って男を追う……。

 本来の『鰍沢』とは正反対の展開だが、談笑版のほうがより人情噺らしく、胸に迫る。

 この談笑が古典の「外伝」を創作する落語会が世田谷区の成城ホールで不定期開催されている。題して「談笑『落語外伝』名作落語~それまで・そのあと・スピンオフ~」。2月20日に行なわれた第4回のテーマは『らくだ』で、談笑は前半に『らくだ』を演じ、後半で『らくだ後日談』を披露した。ちなみにこの公演、本来は1月22日開催だったが、当日朝から東京は大雪で交通網に大きな影響が予想されたため、午後の早い段階で延期を決定したものだ。

 談笑の『らくだ』自体も改作で、ラストに「こう来たか!」と唸らされる見事なオチが用意されている。だがこの日彼が演じた『らくだ』にはそれがなく、オーソドックスに「魚屋へ行ってマグロのブツ持ってこい! 寄越すの寄越さないの言ったら、かんかんのうを踊らせろ」でサゲた。後半の「後日談」へとスムーズに繋げるためだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
政治学者の君塚直隆氏(本人提供)
政治学者・君塚直隆氏が考える皇位継承問題「北欧のような“国民の強い希望”があれば小室圭さん騒動は起きなかった」 欧州ではすでに当たり前の“絶対的長子相続制”
週刊ポスト
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』主演の中井貴一と小泉今日子
今春最大の話題作『最後から二番目の恋』最終話で見届けたい3つの着地点 “続・続・続編”の可能性は? 
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一
《どうなる“新宿DASH”》「春先から見かけない」「撮影の頻度が激減して…」国分太一の名物コーナーのロケ現場に起きていた“異変”【鉄腕DASHを降板】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン
1985年春、ハワイにて。ファースト写真集撮影時
《突然の訃報に「我慢してください」》“芸能界の父”が明かした中山美穂さんの最期、「警察から帰された美穂との対面」と検死の結果
NEWSポストセブン