ビジネス

繊細な美しさ 300年の歴史を持つ滋賀の“高島扇骨”の技

高島扇骨は1本1本が細いが耐久性や強度に優れ、なかなか折れない特徴が

 近江の国といわれる滋賀県西部にある高島市安曇川町。古くから扇子の骨組み『扇骨』が作られているこの町で、その歴史を辿る。

 京都駅からJR湖西線新快速に乗って約42分。進行方向右側の車窓には日本最大の琵琶湖が広がる。JR安曇川駅で下車し、高島扇骨の歴史が展示されているという『道の駅藤樹の里あどがわ』に向かう。その道中には、扇をかたどったマンホールや観光案内が点在する。

「なぜこの地域で扇骨が作られるようになったのか、はっきりとはわかっていません」

 と言うのは、滋賀県扇子工業協同組合理事長・村田高弘さん。

「都の貴族が高島に隠棲して扇子づくりを始めた、武士の落人が生活のために作ったなど、いろんな説があります。ただ、江戸時代に安曇川堤防に植えられた真竹を江戸末期に扇骨として利用したのが、本格的な始まりとされており、約300年の歴史があります」(村田さん・以下同)

 扇骨は外側2本の太く削られた親骨と細く削られた仲骨で構成されている。

「あおぐ用、踊り用など、用途によって骨の数は変わりますが、親骨は2本、仲骨は3~58本です。これらはすべて分業制で作っています」

 親骨は18工程、仲骨は16工程あり、この2つは違う職人によって作られている。

「竹を削る人、磨いて仕上げる人など、細かく分けられています。分業で作った方が、1人がすべてを担うよりも早くできて、質のよいものができるから、それぞれ専門の職人が担当するようになりました」

 実際、作業工程を見ると1000本以上束ねられた扇骨の表面を、包丁と呼ばれる刃物で滑らかに削っていく。その後、親骨と仲骨は薬品につけ、漂白。天日に干して、竹独自の青みをとる。そして再び削って磨き、形を作って、親骨と仲骨を組み合わす“合し”で形を作り、“要打ち”という持ち手の要の部分を金具で留める作業を行えば、完成だ。

「完成したものは、主に京都に出荷され、地紙が貼られて扇子として完成します。京都の扇は初釜に合わせて作られることが多いので、扇骨はそれに合わせて3~7月に製造します」

 骨組みだけでも繊細で美しい。その1本1本に近江職人の技が生きている。

※女性セブン2018年6月7日号

関連キーワード

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン