前述の通り、厚労省は事故の報告に関して明確な規則を設けていないため、各自治体は事業所から上がってくる報告を各々の方針で整理しており、統一性がない。
よって今回のアンケートでは前出・佐藤氏の監修の下、介護の現場で起こる主な事故として「打撲」「骨折」「誤嚥」「誤薬」「異食」「離設」「入居者間トラブル」に絞って調査を行なった。
誤嚥とは飲食物の飲み込みがうまくいかないこと。誤薬は薬の飲み間違いや飲み忘れだ。異食は食べ物以外を飲み込んでしまう事故。離設とは施設から無断で外出してしまうことをいう。
1年間の事故の総数は1万2206件にも上った。うち死亡が85件だった。全国の老人ホームでこれだけの事故が起こり、それを国が把握していないのが現状なのだ。
●末並俊司(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2018年6月22日号