ギャンブル途中の黒字・赤字は極端に偏ることが多い(図2)
この法則を一般的な事例で理解するには、野球、バスケットボール、バレーボールなどのスポーツで、どれくらいシーソーゲームが起こりやすいかを考えてみるとイメージしやすい。対戦している両チームの実力が互角とすれば、点をとったり、とられたりする確率も同じくらいであろう。
では、試合がいつもシーソーゲームになるかというと、そうとは限らない。むしろ、先制点をあげたチームがそのまま逃げ切ることや、追いつかれて引き分けで終わることが多い。たとえ逆転劇が見られたとしても、逆転したチームがそのまま勝ち切ることが一般的だろう。両チームが逆転につぐ逆転の大熱戦を演じて観客を大いにわかせる、といった好ゲームにはめったにお目にかかれない。
コイン投げのゲームに話を戻そう。このゲームをみていくことで、つぎの2つのことがわかった。
(1)最終的な累計収支の分布は収支0を頂点とした山の形になる(図1)。
(2)しかし、ゲーム途中で黒字の状態と赤字の状態のどちらが多いかをみると、どちらかに偏る場合が多い(図2)。
ギャンブルで負けている場合、この先挽回して勝ちの状態を同じくらい味わうことより、負けの状態を味わい続けることのほうが多いということになる。
これは、すでに負けている状態からコイン投げゲームを始めた、と考えるとわかりやすい。たとえ少しくらい表が続いて出たとしても、負けている状態から脱するのは難しい。それどころか、もし裏が続いて出てしまえば、もっとひどい負けの状態におちいることもある。つまり、ギャンブルで負けが込んでいる人は、今後も負け続ける可能性が高いといえる。
ここで、1つ注意点がある。このコイン投げのゲームでは、表と裏の出る確率をいずれも2分の1として話を進めた。
しかし、実際のギャンブルでは勝ちと負けの確率が半々ということはあり得ない。ギャンブルの主催者に、ある程度利益が渡る仕組みとなっているからだ。このため、ギャンブルのプレーヤーは1回のゲームでは負けることのほうが勝つことよりも多い、すなわち負けの確率は2分の1よりも大きいといえる。
ギャンブルで負けていると、それを取り返そうとして、さらにギャンブルにのめり込んでしまう。こういう話は昔からあちこちで耳にする。これは、ギャンブルの行為や過程に心を奪われて、やめたくても、やめられない状態になる「ギャンブル依存症」の問題に、関係しているのかもしれない。
統計的には、赤字の状態から挽回して、黒字の状態を同じくらい味わうということは起こりにくい。ギャンブルで負けているときには、いい加減どこかであきらめて手を引く判断が必要と思われるが、いかがだろうか。