一つ屋根の下で複数の人間が生活する老人ホームでは、人間関係のトラブルも日常茶飯事だ。
「『Aさんがお隣のBさんにキスした』などセクハラ的な事案もある。『入居者間トラブル』だが、心情的にご家族には伝えにくく、両者の家族に伝えませんでした」(関東近郊の介護付き有料老人ホーム職員)
自治体に報告される事故でも、家族には伝えられない場合が多くある。しかし、施設が家族側に配慮した結果というケースもあるから複雑だ。
「入居者の家族には『いちいち報告されても困る』という方も多い。どこまで伝えるべきか、施設側も苦慮している」(同前)
事故報告を家族が適切に受けとるにはどうしたらいいのか。
「たとえば“父は嚥下機能が低下しているので、誤嚥に関しては軽微でも報告してください”と入居者の具体的な心配を事前に知らせることが重要です。また“自分が入居者だったら、家族にどこまで伝えてほしいか”と想定してみることも大切です」(佐藤氏)
人が生活する場である限り、「事故ゼロ」はあり得ない。だが、家族を守る情報と基準は知っておきたい。
●末並俊司(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2018年6月29日号