国内

SNSの「カップル黒歴史」は今も量産されている

破局してもネットに残り続けるカップル共同アカウント

 交際中のカップルがSNSのIDとパスワードを共有してつくる「カップル共同アカウント」、通称「カップル垢」「共同垢」(※垢はアカウントのネットスラング)。共同アカウントをつくるのが目的のSNSもあるが、Twitterなど世界中に交際の様子を公開しながら運営されるアカウントも少なくない。ネットの海を漂い続ける、破局したカップルが過去につくったアカウントに翻弄される若者の思いを、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「なんか、彼女が別の男と映ってるアイコンのアカウントが出てきて……。浮気してんのか? って彼女を問い詰めたんですけどね……。違うとはわかっていても、気分が悪いっつーか……複雑すぎるでしょ、って」

 都内在住の専門学校生・三浦竜輝さん(仮名・19歳)が、スマホで件の「アカウント」を筆者に見せながらうなだれた。アカウント名は「別れました」になっており、ツイートやフォロワーなどは非公開になっているが、プロフィール写真は三浦さんが現在付き合っている千晶さん(仮名・19歳)と、チャラそうな謎の男のツーショットだ。

 実はこれ、三浦さんの今カノである千晶さんが、高校時代に付き合っていた男性と開設した「共同アカウント」なるもの。男女で一つのアカウントを共用し、相手への愛をつぶやいてみたり、喧嘩をしたときはこっそり謝ってみたり……とまあ、我々オッサンにとってみればどうしようもないような「SNS」の利用法にしか見えないが、今なお、若い世代を中心に、このカップル共用アカウントが続々と開設されては、二人が別れた後も「黒歴史」として残ってしまうパターンが相次いでいるという。

「若気の至り……なんでしょうけど、せめて消せよって…。でもパスワード忘れて消し方わかんないし、パスワード聞くために元カレに連絡とってほしくもない。そんで……残ってるのならどういうやり取りがあったのか覗いてみたい気持ちも……」

 そもそもなぜ三浦さんが彼女の「別れました」アカウントに気が付いたのか?

「彼女がいま使っているツイッターアカウントは、名前と誕生日の四桁でIDが作られてます。そのクソアカウント(※過去のカップルアカウント)のIDは、彼女のIDの後に前の男の名前と誕生日が連続していたんです。彼女のツイッターを見ようと思って検索していたら候補に出てきちゃって……。彼女に悪気がないのはわかっているんですけど、ルーズな側面が見えて、一気に萎えましたよ、マジで……」

 こうしたネット上の消したい過去、いわゆる「黒歴史」は、これまでも新しいSNSが出てくるたびに作られてきた。その黒歴史がたくさんつまったものといえば、2004年にサービスが開始された「前略プロフィール」、通称「前略プロフ」または「プロフ」がまず思い浮かぶ。メール一通で質問に答えるだけで簡単に登録できること、ガラケーからも手軽に登録、閲覧できることから中高生に大ブームとなった。文字通り、自分の詳細なプロフィールを作りネット上で公開できる、というサービスだが、かつてプロフを公開していたという福岡県在住のサラリーマン・松岡ユウキさん(29)が説明する。

「前略プロフは、中学の時に作りましたね。当時はヤンキーへの憧れがあったから、旧車(バイク)が好きとか、好きなブランドはヴィトンにグッチ、好きな歌手は倖田來未、みたいな……。当時付き合っていた彼女の名前を書いて永遠の愛だの、彼女に話しかけたやつを殺すだの書いちゃって……。んでパスワード忘れて放置してたんですけど、就活の時に、自分の名前でググると、真っ先にそのページが出てきちゃったんですね(笑)。内定した職場の上司から指摘されて、顔から火が出ました。冗談で済んだからよかったけど……」

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