西野ジャパンの最後のピース 写真/岸本勉(PICSPORT)
2018年サッカーワールドカップ日本代表メンバーに、直前まで選ばれるか微妙な位置にいた武藤嘉紀(25)は、西野ジャパンの“ラストピース”といえるだろう。
「もちろんロシアへ行きたい気持ちはあるけど、まずマインツをドイツ1部に残留させないと呼ばれない。(ハリル前監督が)どういう選考基準かってことも定かではないから、とにかくやり続けるしかない。自分のベストを出して呼ばれなかったらしょうがない」
3月のマリ・ウクライナ2連戦の代表から落選した時、武藤はいい意味での割り切りと覚悟を口にしていた。その後、指揮官交代で風向きが変わり、自身も今季ドイツ1部終盤のドルトムント戦で値千金の決勝弾をゲット。マインツ残留の原動力となった。この活躍を目の当たりにした西野朗監督がラストピースとして彼を招集。そして23人への逆転滑り込みを果たした。
今は大迫勇也(ブレーメン)や岡崎との競争の渦中にいるが、パラグアイ戦では右MFとしても新境地を見出した。「ロシアではレギュラーで出たい。結果が全ての世界だからゴールにつながるプレーをしないと。FWにとって一番分かりやすいのは得点。それ以上のことはない」と語気を強める。フィジカル・頭脳明晰・イケメンと三拍子揃った男だが、泥臭く貪欲にゴールに向かうスタイルは魅力。この男がピッチで大仕事を見せてくれる予感が大いに漂う。
【プロフィール】むとう・よしのり/1992年7月15日、東京都世田谷区生まれ。慶応大学3年の2013年にFC東京でJデビューし、2014年に日本代表入り。2015年夏からプレーするマインツでは2度の右ひざ負傷で苦しんだが、逆転でロシア切符を得た。妻は渡辺周・衆議院議員の娘。長女がいる。
■取材・文/元川悦子
※週刊ポスト2018年6月29日号