国内

右派系まとめサイトの管理人に「目的」を直撃してみた

農作業の合間にまとめを更新し毎月20~30万円の収入

 ヘイトスピーチを含む不正確な情報を掲載する右派系サイトが、次々と閉鎖に追い込まれ、また存続しているサイトも広告出稿を停止され収益を減らしている。差別的な記事への非難が高まっているためだが、消されたサイトの運営者たちは、すぐに仮想通貨などをとりあげる別の情報拡散サイトを再オープンしている。訴えたいことがあったから、右派系サイトを運営していたのではなかったのか。ライターの森鷹久氏が、ある右派系サイト運営者を直撃した。

 * * *
 大手の「右派系まとめサイト」として知られる「保守速報」への広告出稿について、広告代理店や数社の企業が、広告の停止を決めたと発表した。

 筆者は自他ともに認める「保守」ではあるが、保守速報などをはじめとした右派標榜の「まとめサイト」は、情報がきわめて恣意的かつ偏向的で、さらに、どこの誰が書いているかもわからず、その多くが差別的な感情を煽る、大変有害な存在だと感じている。また、これらまとめサイトの情報を鵜呑みにした多くの人々が、複数の弁護士に「懲戒請求」を乱発するなど、社会的な混乱を招いている事実もある。

 はたして、右派標榜のまとめサイトは、誰がどのような意図で作り、公開しているのか? 筆者は、数ある右系まとめサイトの中から「韓国・朝鮮人排斥」を煽る文言や、安倍政権に意を唱える人々を誹謗中傷する掲示板の書き込みだけをまとめた、悪質性の高い複数のサイトを抽出。アーカイブデータや連絡先メールアドレスから、あるまとめサイトの管理人の存在を割り出し、疑問をぶつけた。

「思想は右寄りでも左寄りでもありませんでしたが、結果的に右寄りになったかな? ネタ(コンテンツ)は何でもよくて、最初はファッション系のアフィリエイトブログをやっていましたが、政治的なものの方が儲かりそうな気がして、五年前くらいからまとめサイトを始めました。月収は20万から30万ほど。兼業農家なので時間のある時に、休憩中にパッパッとまとめるだけ」

 今回取材したのは、北関東某市に住む武田雄二さん(仮名・30代)。筆者が突然、彼の携帯電話に連絡を入れたところ、大変驚いた様子で観念したように話し始めた。しかし、一貫して悪びれる様子はなく、あくまでも「ビジネス」と言い切る。

「コメ農家をしながら、家族で経営しているコンビニ店でも働いています。景気が悪かったとき、他にも収入の手段が欲しいと思い、ネットで10万円の“情報商材”を購入したんです。商材にはアフリエイトブログやまとめサイトを複数作成し、簡単な記事を書いておけば、広告収入が半永久的に発生し収益になる、というようなことが書いてありました」(武田さん)

 武田さんが購入したのは「毎日30分で月に100万円の不労所得が得られる」などといった文言と共に販売されていた情報商材。メールで送られてきたPDFデータの商材は残念ながら破棄していたが、今も、同じような内容の商材は販売されている。

「まとめサイトのネタは何でもいいんです。芸能人のスキャンダル、画像や動画など、耳目を集められるようなものであれば何でも。最初はファッション系、ニュース系、芸能人の噂、この三つに絞ってサイトをいくつか立ち上げましたがどれもうまくいかず、アフィリエイト収入は月に数百円行けばいいほうでした。ファッションには疎く、ニュースだってよくわからない。芸能人の噂は他のサイトに書いてあった記事のコピペや写真の無断使用で通報されて……。そこで、右派系のまとめサイトをノリで始めたところ、まとめ記事の情報が掲示板に張り出されて、PV(ページビュー)が10倍に。これだと思いましたね」(武田さん)

 武田さんには記者やライターの経験もなければ、もちろん取材経験もゼロ。それでも、情報商材に書いてあった通りに、ニュースサイトや他人のブログの文言をコピペし、多少の改変を行えば、いかにもそれらしい「記事」が出来たという。様々試してみたが、一番「カネになった」のが「右派系まとめサイト」であった、ということなのだ。

 しかし、いくらカネのためとはいえ、前述したように特定の国やその国民を見下したり、差別的感情をあおるような記事が散見されるのは大変な問題なのではないか? さらには、そうした問題が社会的な不安を生み出していることに、どう責任を感じているのか。

関連キーワード

トピックス

現地取材でわかった容疑者の素顔とは──(勤務先ホームページ/共同通信)
【伊万里市強盗殺人事件】同僚が証言するダム・ズイ・カン容疑者の素顔「無口でかなり大人しく、勤務態度はマジメ」「勤務外では釣りや家庭菜園の活動も」
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン