今年5月29日には、厚生労働省が「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」を発表し、全国の医療機関に周知した。日本老年医学会も2015年に「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を10年ぶりに全面改訂している。
こうした対応が必要となるのは、年齢によって「薬の効き方」が違ってくるからだ。
厚労省の新たな指針の作成ワーキンググループのメンバーに名を連ねた、たかせクリニック理事長の高瀬義昌医師が解説する。
「口から飲んだ薬は胃や腸で溶けて吸収され、肝臓で分解された後に腎臓から体外に排出されます。ところが高齢になると肝臓や腎臓の機能が低下し、それに伴って代謝や排泄の機能も落ちる。すると薬の成分が体内にとどまる時間が長くなり、効きすぎるリスクが増大するわけです。
飲んでいる薬と年齢に応じて服用のスタイルを変えれば、こうしたリスクを軽減できます」
どんな薬にもリスクとベネフィット(有用性)があり、加齢に伴う体の変化と薬の種類によって、両者のバランスは大きく変わっていくため、年齢によって「減薬や服用の中止を主治医に相談してほしい」と、石原医師は話す。
「患者の健康状態によっても服用の是非は異なります。自己判断でやめてしまうこともリスクにつながるので、医師に相談しながら細かい判断を重ねていくことが大切です」
※週刊ポスト2018年7月20・27日号