普通の過失による不法行為の場合と違い、本件のような故意による不法行為でも被害者の過失を斟酌し、過失相殺できるかは被害者保護の見地から議論があるところです。ただし、過失相殺は損害の公平負担の大原則ですから、適用されるべきだとは思います。また、あなたがこうした行動に出たのは、公徳心に欠けた傍若無人な歩きスマホへの怒りに触発された面があり、当該若者の過失も斟酌されるべきだとも思います。
そこで減額交渉は不合理な要求ではありません。ただ、注意してください。あなたは故意にぶつかっています。有形力の行使として刑法のいう暴行になりかねない行為です。若者が倒れ、ケガでもすれば、傷害罪に問われた恐れもありました。警察に行こうといわれると面倒ですから、強硬に交渉することには賛成できません。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号