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買い物がてらに1杯やれる 地域に根ざす川崎・鶴川の角打ち

大勢が楽しめる角打ちスペースだが、それでも所狭しと客たちが集まってくる

「この地域に暮らす人たちの役に立つ店でありたいんですよね。なくてはならない存在になれればいいなと、そんな気持ちで毎日店を開けています」と、配達帰りの汗を拭きながら語る『赤荻酒店』(あかおぎさけてん)の2代目・赤荻祐司さん(50歳)。
 
 店は小田急線の鶴川駅から西へ5分ほど歩き、カルガモが遊ぶ鶴見川にかかる大正橋を渡ったあたりにある。ゆるやかな丘陵地帯に広がる閑静な住宅地だ。
 
 その麓に位置している角打ちができるこの酒屋さん、常連客の証言によると、主人の祐司さんの思い以上に、しっかりと地域の人々の生活にも心にも溶け込んでいるようだ。
 
 例えば、「今日は私のゼミの同窓会的な集まりでここにやってきました」という、この先の高台に居住している大学の教授(60代)の話。
 
「実に満足する銘柄を揃えている酒屋さんなんですが、新鮮でおいしい食料品も豊富でしてね。駅前まで行かなくても、ここまで降りて来れば買い物は済むんですよ。我々住民にとっては、心憎い場所にある貴重な店。買い物して、それからゆっくり角打ちをという人がけっこういまして。ええ、私もそのひとりですけどね。さらに心憎いのは、帰りかけると、2代目がときには車で自宅まで客も品物も送り届けてくれたりしてくれて。常連の高齢者の皆さんは大感謝です」
 
 父親が昭和42年に興した店を次男の祐司さんが平成12年に引き継いだ。
 
「兄貴はサラリーマンになっていましたし、ずっと自分が店を手伝っていたので、自然の流れでしたね。どういう店にしていこうか考え抜きました。店の場所的に、食料品をたくさん置けば地域の方たちに喜んでもらえるだろうかとか。父の時代は、角打ちはやっていなかったのに、その頃にも勝手に楽しんでる感じで飲んでいる常連さんがけっこういましたから、角打ちもいいなと。そうすればみんなの溜まり場になりますからね」(祐司さん)
 
 店の右端、倉庫の部分に巡らした長板が角打ちテーブルは、ここで15人前後は、同時に楽しめそうな広さがある。

 この日も、先のゼミグループの他に、「ここの常連の友人について来て、以来自分も常連になった」というサラリーマンや、「引っ越してきて、ここが家から一番近い酒屋だった。飲めて顔見知りもできて、気持ちが良くてで、もう、10年以上通っている」と語るエンジニアなどが、うまそうに喉を潤し、笑いあっている。

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