「お母さん(赤荻ミサヲさん)がいてくれるだけでさ、なんか昭和の懐かしさが感じられてうれしいんだよ。平成も終わるみたいだけど、やっぱ私らが安心できるのは昭和だものね。それにさ、ここで扱っている豆腐がうまいんだよ。なんか豆腐の名店が造っているブランドものらしいよ。これを肴に店の隅の倉庫で飲むスタイルが、また魅力なんだよ」(60代、自営業)
彼らが店の冷蔵庫を開けて、うれしそうに出して来る酒には、焼酎ハイボールが目立つ。これがその豆腐のうまさをさらにひきたてるらしい。
「これって、最初に飲んだとき、あれって思ったのさ。そう、甘くないのよ。実に心憎い味でさ、ガツンとこないで、やさしく酔わせてくれる。ファンになっちゃった」(40代、水道修理業)
「今は冷奴とか、駄菓子とか手を加えないつまみしか出せないのですが、心づもりとしては近い将来、必要な免許を取って、うまいつまみを作って食べてもらえるようにしたいんですよ。食べ物メニューが増えるということで居酒屋的にはなるけど、どこまでいっても角打ち主体のスタイルは変えません。自分としても、とても楽しみなんです」(祐司さん)
居合わせた常連客は、酔って聞いていなかったふりを装いながら、2代目なら間違いなくそれを実現してくれるはずという顔で、一層心休まるたまり場の誕生を一緒に夢見ていた。