レジェンドはみなのアイドル
自分は「大井の的場」だ、という意地とプライドがあった。
「勝つときの喜びと充足感こそ騎手という職業の最高の魅力」と言う的場が、もっとも勝ちたいと思っているのは、大井で行なわれる東京ダービーだ。しかし、これまで37回出場して未勝利。2着が10回もある。
「しょうがないよ。2着10回、それもいいことだよ」
なぜ、45年も高いモチベーションを持ちつづけてこられたのか。
「つねに目標があったから。4000勝の次は5000勝、と。今回の佐々木竹見さんの最多勝記録更新も。でも、自分が日本一になったら、次は何を目標にしたらいいのか困るね」
いつ、どんなときに騎手を辞めるかは考えたことがないという。
「俺は一生涯騎手。辞めたあとは何にもするつもりはないよ(笑い)」
この道ひと筋の自然体。レジェンド・的場文男は誰からも敬われ、愛されている。
【PROFILE】まとば・ふみお/1956年、福岡県生まれ。大井競馬場東京都騎手会所属。「大井の帝王」の愛称で親しまれ、地方競馬全国リーディングを2回(2002年、2003年)、大井競馬リーディングを21回(1983年、1985年~2004年)獲得。佐々木竹見騎手(引退)が持つ地方競馬での通算勝利数記録更新が近づいている。大井競馬場の的場直之調教師(元騎手)は甥、佐賀競馬場の元騎手・元調教師の的場信弘(直之の父)は兄にあたる。
●取材・文/島田明宏 撮影/小倉雄一郎
※週刊ポスト2018年8月10日号