『4千分の1の名将 新・高校野球学[関西編] 』(大和書房)
2015年春季近畿大会で打倒・大阪桐蔭を実現した公立進学校の彦根東の村中隆之監督は、今春の選抜に出場し、公立校で難しいと言われる夏と春の甲子園の連続出場を成し遂げた。
「試練」や「困難」という言葉にひれ伏さずに、逆に燃え上がるチームを作り上げ、強豪私学に果敢に挑む姿勢は全国の公立校に手本になるチームと言える。
「何のプレッシャーもありませんから、大阪桐蔭のような強いチームとやることのほうが楽しいです。本当に強いのは大阪桐蔭。端から1 対1で戦ったら、絶対に負けます。でもみんなでよってたかって、蜂が千匹まとまるように戦えば怖い。そんなイメージで戦って、大阪桐蔭に『あれ、何かおかしい』という雰囲気を試合の中で各自が作り出していきます」
自分たちの土俵で戦うことで、横綱から金星を奪う村中監督の戦法は今夏の100回大会でも大きなヒントになるはずだ。
100回記念大会の56校の出場校の内、公立校はわずかに8校。年々、私学と公立の力の差が開いていることを実感せざるを得ないが、「勉強も野球も垣根なしにしっかりやる。どっちも日本一になる文武両道です。甲子園に出ることと、難関大学にいくことの両方で、結果にコミットメントしないといけません」という村中監督の言葉を聞けば聞くほど、全国の公立校は勇気づけられるだろう。
今夏は滋賀県大会で敗戦し、3季連続での甲子園出場はならなかったが、「甲子園はすごい価値観の変わる場所なので、その場所を一人でも二人でも多くの子供たちが経験することは大事」と、指導方針にぶれはない。
「全員の力を振り絞って、春夏連覇に挑戦したい」──北大阪大会を制した西谷監督は、珍しく声高らかに記念大会制覇を宣言した。今夏の主役は間違いなく大阪桐蔭であり、他の55校がどんな戦法で打倒・大阪桐蔭をやってのけるのか、「4千分の1の名将」を決める目が離せないアツい戦いは、松井秀喜氏の始球式で今日、幕を開ける。