コンビニドーナツが失敗した原因のひとつとして商品自体の設定を挙げる声が多い。
今までコンビニはナショナルブランドを模した商品をPB(プライベートブランド)として開発、商品化していった。金の食パンなど価格は多少高いながらも独自の機能を持ったPB商品は、消費者から支持されコンビニの売り場におけるPB比率は高まっていった。
コンビニドーナツも発売当初から、ミスドの商品と酷似していると評判になり、何かと比較される場面が多かった。コンビニのPBドーナツがミスドというNB(ナショナルブランド)商品の価値を上回る商品を提供できなかったのが、敗因のひとつとみる。
もうひとつ敗因があるとすれば、消費者の購入スタイルの読み違いだろう。発売当初は、ドーナツの本場・ニューヨークで働くビジネスマンのように、「片手にコーヒー、片手にベーグル」というスタイルを模した販売イメージを持っていたに違いない。コーヒー戦争に勝ち抜いた余勢を受けて、“ついで買い”の効果を狙っていた。
手に持つこと、食べ歩きを前提としたため発売当初は袋に入っておらず、購入時に2つ折りのペーパーで挟んで提供されていた。しかし、コンビニが誤算だったのは、日本の消費者の片手はすでにスマホで埋まっており、コーヒーとドーナツを両手に持つスタイルが確立できなかった。スマホとコーヒーですでに両手がふさがってしまう──このイメージが崩れたことから、コンビニドーナツの迷走は始まった。
一方、長年日本のドーナツ市場をけん引してきたミスドも、コンビニとのドーナツ戦争に勝利したとは言い難く、経営的には苦しい様子がうかがえる。
ミスドの親会社であるダスキンのセグメント別売上高・営業利益を見ると、2015年3月期の売上高482億円をピークに年々右肩下がりとなっている。直近の2018年3月期では376憶円とピーク期よりも約100憶円も売上高が下がっている。
だが、営業利益では2015年約2憶円マイナスから2018年3.5憶円プラスと数年ぶりに赤字を脱した。2018年は客単価(全店ベース)、客数(同)、稼働店舗数ともに減少と明るい材料がなかったが、減価償却など経費減少の結果、営業利益のプラスを何とか捻出した格好だ。
ミスド店舗に足を運んでみた。最近は集客の軸としてコラボ商品に力を入れている。例えば7月20日より発売となった『チーズタルド』は、ドーナツにPABLO(パブロ)のレアチーズホイップを乗せて商品展開している。
また、コラボ商品と併せて昨年よりホットドッグやパスタなどを提供する「ミスドゴハン」を展開している。これはカフェタイムが主であったミスドにおいて、今まで来店していない客層の取り込みを狙った商品戦略だ。
来店客の少なかった朝、そしてランチタイムの来店促進に向けて、ドーナツより少しボリューム感のあるサイドメニューを組み合わせることによる「ドーナツでは物足りない」層の取り組みも狙っているのだが、まだまだ周知の不足感が否めない状況だ。