「仮想通貨用のATMを使えば少額ではあるけど金を引き出すこともできるからね。他人名義で作った口座に入れた金を出し子を使って引き出せば現金化することはできる。まあ、効率がいいとはいえないけど、ちまちま現金にしていたやつはいたよ」
日本にも現金を引き出すことができるATMは何か所かに設置されている。
「あとは私も少し買っていたWコイン(※仮称)というものがあったんだけど、これは運営が詐欺で計画自体が頓挫したね。でも[ビットコイン→Wコイン→チップ]という流れで容易にマネロンできるところに可能性を感じていたんだよね。あと、欧米の銀行でもマネロンしているところはあるよ。ある程度の額になると、空港まで銀行員が迎えにきてくれる。ネットからの予約が誰でもできるっていうんだから、マネロン様々って感じだよね」
「プレスメント(お金をおく)」→「レイヤリング(送金)」→「インテグレーション(ごちゃごちゃにする)」という作業がネットだけでできるので、秘匿性の高いコインを間に挟み、日本の税務署の捜査が及ばない国で現金化をすればいくらでもマネロンすることができるという。
「他にカジノで使える仮想通貨もあるから、マカオや香港なんかの話のわかるカジノならリベートを渡せばギャンブルの払い戻し金として返してくれる。こうなれば警察も税務署も手は出せない」
これまで現金化が難しかった犯罪収益が、仮想通貨を使うことで容易に表社会に持ち出すことができるようになった。警察や税務署も捜査に力を入れているが、悪用する者のほうが技術的に先行するというのが、この世界の常である。技術に長けた犯罪者たちの皮肉な笑みが目に浮かぶようだ。
【PROFILE】草下シンヤ/1978年、静岡県出身。豊富な人脈を活かした裏社会取材を得意とし、『実録ドラッグレポート』『裏のハローワーク』などの著作がある。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『ハスリンボーイ』(原作担当/漫画・本田優貴氏)を連載中。第1話試し読み http://spi.tameshiyo.me/HUSTLINSPI01 Twitterアドレス https://twitter.com/kusakashinya