中国の犯罪グループは子供を巻き込むことにもためらいがないという。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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日本では、めっきり聞かなくなった言葉だが、「当たり屋」という存在はまだ中国では珍しくないようだ。しかも、中国の貧しい地域では、それが組織化されて管理されている。そんな実態が理解できるニュースが中国を駆け巡ったのは、今年6月末のことだ。
伝えたのは、『看看新聞』である。タイトルは、〈これぞ本当の「血の代償」 当たり屋グループが自ら鎖骨を折り、三輪自動車に突っこむ〉だ。
場所は、安徽省合肥長豊県。三輪自動車を運転していた馬さんは、親子連れと思われる通行人が目の前で転ぶのを目撃した。馬さんは子供の転倒は自分に無関係だと確信していたが、子供の親と思われるその太った男は「いま、あなたがぶつかった。子供を病院に連れて行って治療しろ」と執拗に迫った。
しかたなく病院に行くと、子供の左側の鎖骨が折れていることが分かった。結局、馬さんはその場で治療代7000元(約11万3000円)を含めて1万元(約16万1000円)を支払わされたという。
だが、納得いかない馬さんは警察に通報した。それからしばらくして、今度は安徽省安慶市で同じような事案が警察に通報され、そこから当たり屋グループが芋づる式に摘発されたのだった。
警察によれば、一回の当たりで平均1万元ほどを得ていたというが、それにしても子供の鎖骨まで折ってしまうとは、何ともやり切りない話だ。