睡眠時無呼吸症候群の治療は寝ている間に、下顎が落ちないようにするマウスピースとC-PAPという医療器具が保険承認されている。マウスピースは簡便だが、効果はC-PAPに劣る。一方、C-PAPは専用のマスクを一晩中、鼻に装着して寝る必要があり、毎晩継続して使用できない患者も3~4割に達する。さらにC-PAPは、いびきや軽症の睡眠時無呼吸の人には保険適応外だ。
そこで佐藤教授が、鼻から挿入し、口蓋垂付近まで届くステントのアイデアを思いつき、これを2004年に特許申請した。その後、企業と共同で開発されたのが鼻腔挿入デバイス「ナステント」である。左右どちらかの鼻の孔から、シリコン樹脂製のチューブを口蓋垂の少し下まで挿入することで気道を確保する。チューブは直径5mmで、長さは120~145mmの6種類あり、医師が診察して個人に合った長さを決める。脱落防止のため、小鼻に固定するストッパーが付いている。
「挿入にはコツが必要ですが、練習すればほとんどの方が挿入できるようになります。いびきや無呼吸の患者を対象にした研究で、いびきの低減や無呼吸低呼吸指数が有意に改善しました。しかし、重症の睡眠時無呼吸症候群に対しては、あまり十分な効果は見られませんでした」(佐藤教授)
現在、より重症な睡眠時無呼吸にも有効なナステントを開発中だ。ナステントは一般医療器具なので、医師の指示箋で量販店や調剤薬局でも購入可能。感染防止のため、使い捨て、7本入り3500円程度で販売されている。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2018年8月31日号