大分県臼杵市はキリシタン大名として知られた大友宗麟が築城した臼杵城の城下町として栄えた街。古くから醸造技術が発展し、九州独自の麦焼酎やみそ、しょうゆが造られています。
なかでも生産日本一を誇るのが麦みそ。この街に本社を置くメーカー『フンドーキン醬油』が、その全国トップシェアを獲得している。
「みそは麹と大豆、塩を混ぜ合わせ、発酵させて造ります。関東の米麹に対し、九州は大麦でできた麦麹を使用しています。それは、九州では昔から米より麦の生産が盛んだったためといわれています」(同社広報担当の永松浩一さん・以下同)
麦みそは米みそに比べて、見た目が白っぽく、甘い。その上、麦独自の繊維質がたっぷり含まれているのも特徴だ。
「麦みそは麹の量も多いので、発酵が進みやすいのです。発酵が進むと、辛味も強くなるので、あまり熟成させません。大豆と麦麹、塩を混ぜてから3か月くらいで出荷します。このくらいの期間で出すと、甘めで色の淡いみそになるのです」
甘めの麦みそはどんな料理にも合うが、とくに豚肉との相性は抜群だと、永松さん。
「豚肉に薄く麦みそを塗って、網で焼くと、麹の効果で肉がやわらかくなり、旨みが増すんです。豚汁や、水で練った小麦で作る大分の郷土料理だご汁も、麦みそだからこそ出せる深い味わいです」
最近は九州でも米と麦をあわせた『あわせみそ』が主流だが、それも麦みそが醸し出すやわらかな甘みが生かされているから。
「われわれはみそ汁にカボスの汁やゆずこしょうをほんの少しだけ入れて食べます。癖の少ない麦みそだからこそ、柑橘類の香りが引き立つ。これが九州独自の食べ方です」
同社の工場を訪れると麹の甘い香りが漂い、食欲をかきたてられる。醸造の街が生んだ豊かな食文化は真似できることも多い。
※女性セブン2018年9月27日号