葬式は2年前に済ませています。比叡山延暦寺阿弥陀堂に夫婦の位牌があります。戒名は英勝院智俊慈道居士。まだ生きているので赤字で彫ってあり、亡くなるとその赤が削られます。お坊さんが四十九日もやってくれて、骨は半分は黒沢家の墓に、半分は比叡山におさめられる。
お墓はせっかく建てても100年もすればなくなるものでしょう。子供がずっと守ってくれるものでもない。いずれ無縁仏になって供養もされずに終わってしまう。でも、ここなら比叡山がある限り、永遠に祀ってくれる。大勢の観光客がやってきて、拝んでもくれるでしょう。
こう考えるのも、人に迷惑をかけたくないから。僕が野球選手の夢を諦めたのは、16歳の時におふくろが亡くなったからなんです。おふくろの最期の言葉は「年雄、よろしく頼むよ」。僕がしっかりみんなを養わないといけないと思うから、できることは全部、やっておきたいんです。
僕はよく「怖い」と言われるんだ。今まで、コンプレックスからきている反骨精神の「負けるもんか」という気持ちが強すぎたからだと思っています。それを捨てて、来年からは笑顔だけで行こうと思ってね。見た人に「怖くないじゃない」「いい歳して面白いね」と言ってもらいたい。「馬鹿だね」と笑われてもいいし、むしろ笑われたい。みんなが笑えば、社会が明るくなるじゃないの。そうして人生を終わらせたいね。
※週刊ポスト2018年9月21・28日号