仕事だけでなく日常生活でもよく用いられる「コストパフォーマンス(費用対効果)」の概念。かかった費用に見合った効果が得られなければ損だと考える人は多いが、「サンクコスト(=埋没費用)にこだわり過ぎると、ドロ沼にはまる恐れがある」と指摘するのは、ニッセイ基礎研究所・上席研究員の篠原拓也氏だ。
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経済学や経営学では、物事を実施する場合に、費用対効果という考え方が用いられる。どんな事業でも、効果を上げるためには、何らかの費用がかかる。そこで、かかる費用に見合っただけの効果が上げられるのかどうかを見積もるわけだ。そして、費用対効果が高い事業は進める、低い事業は見送る、と判断する。
ただし、実際に事業を開始すると、計画どおりに進むとは限らない。費用対効果が高いとみられた事業が、いつも成功するとはいい切れないのだ。
なぜだろうか? それは、どんな事業にも、常にリスクがつきものだからだ。
費用対効果を見積もっていたときと比べて、事業開始後に、収益環境や競争条件が変化してしまうことは、よくあることだ。ひどい場合には、環境や条件が大きく変化して、今後の効用が全く見込めなくなってしまうことだってある。その場合、着手していた事業は中止とすべきだろう。
ところが、物事の判断はそんなに簡単にはできない。それまでに既にかかってしまった費用が、事業中止の判断に水をさすのである。ひとつ、身近な例で考えてみよう。