「ステップバイステップでクルマの価格を上げていければいい。アウディの歴史を見ても、やはり着実に(価格の引き上げを)やってきています。当社でいえば、2012年からの商品群、今回の第2世代の商品群、そして次の第3世代と考えていきながら、少しずつ上げていきたいなと」(丸本氏)
アウディの事例については、マツダの幹部がこう補足する。
「アウディは、30年以上かけて今のプレミアムブランドとしてのポジショニングを確立しています。その間、クルマのモデルチェンジのたびに、ベースモデルの価格は前のモデルの価格を踏襲し、上のグレードの価値と価格を引き上げる。
さらに次のフルモデルチェンジでも前のモデルの売れ筋価格をベース価格に置き、上のグレードはさらに価値と価格を高める。いわば“尺取虫”のような戦略を取ってブランド価値を引き上げてきました。そういう戦略で徐々に全体の価格を上げ、ブランドを築いてきたのです」
CX-8でいえば、昨年末の発売時は2200ccのディーゼルエンジンのみ(前輪駆動のベースモデルが319万6800円、四輪駆動の最上級モデルが419万400円)で、去る10月25日に商品改良を発表し、前述の2500ccのガソリンエンジン、ガソリンターボエンジンを加えている。
これまでの国産メーカーにありがちな、単なる特別仕様車やお買い得モデルの設定だけではなく、「商品改良によって商品の質や価値を上げていく戦略で、それに合わせた適正な価格設定をすることで結果、少しずつ価格を上げてきた」(同前)というわけだ。
CX-8の商品改良前と後の価格差は、ディーゼルエンジンの同じグレード同士で比較すると、最小で15万6600円、最大で27万円の価格アップというあたり、やはりアウディ方式を意識した価格政策に映る。
冒頭で触れたように、2012年以降の商品群で、マツダのクルマが変わったことは消費者にかなり浸透した。新型アクセラ以降、順次登場する商品群で質感や価値の向上に伴う価格アップを、消費者が「安い」か「妥当」と思えば成功、「高い」と受け止めたら失敗だ。その勝負のステージがいよいよ始まる。
●文/河野圭祐(ジャーナリスト)