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佐久間良子 デビュー当時は「いつか辞める」が口癖だった

佐久間良子がデビュー当時の思い出を語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、東映の社員にスカウトされて女優になった佐久間良子が、デビュー時の思い出について語った言葉をお届けする。

 * * *
 佐久間良子は高校在学中の一九五六年、通学時に東映の社員の目にとまったことが役者の世界に入るキッカケとなる。両親は猛反対し、当人も乗り気ではなかったが、東映側の日参もあり「一年間だけ」とニューフェイス特別枠として東映に所属する。

「ニューフェイスといっても正規ではないので、みなさん方と一緒に試験や審査を受けることはありませんでした。ニューフェイスで入ると東映からの委託生として俳優座で半年間ほど勉強することになっていまして、パントマイムやバレエを習いました。

 ただ、私も含めて学校の延長みたいな意識で、勉強というよりは遊びながらでしたから、本当に楽しい日々でした。私は人と争うのが嫌で、そうやってみんなと一緒に楽しんでいたので、同期の中で私だけすぐに抜擢されたのですけれど、みなさん温かく応援してくださって。

 同期の中にナベちゃん……山城新伍さんね、それから曽根晴美さんに室田日出男さんがいました。みんなそれぞれ個性のある方で。みなさん、早くに亡くなってしまって残念でなりません」

 五八年のアニメ映画『白蛇伝』での作画用モデルを経て女優デビュー、すぐに年十本以上の映画にヒロイン役で出演するようになる。

「一人の新人を売り出すために何が何でも名前を売ろう、ということでした。芝居が上手いとかはどうでもよくて。毎週のように新しい映画が公開されていましたから、それに出続けることで名前を知ってもらおうというのが東映の考えでした。

 嫌で嫌でしょうがなかったです。というのも、好きで入った道じゃないでしょう。しかも撮影所に行くとスタッフの人たちが『どんな新人が入ってきたんだろう』とジロジロ見てくるんです。それで撮影所の入口のところで五、六分ためらうこともありました。

 随分と馴染めませんでしたね。当時は『いつか辞める』というのが口癖でした。でも、周りが怖くて辞められなかったの。当時の撮影所は大泉の畑の中にポツンと建っていて、撮影は夜の九時過ぎまであるんです。あの暗くて寒い一本道を帰る時はいつも、『なんで私はこんなことをしなくちゃいけないんだろう』と思っていました」

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