大泉の東京撮影所以外にも太秦の京都撮影所で作られる時代劇にも出演していた。
「当時の東映は男性路線で、私の役は主役の男性の妹や恋人の役でした。大体二本はかけもちで。朝九時から昼まで一本目に出たら午後は別の作品とか、もうグチャグチャでした。それが五時に終わったら会社の車に乗せられて東京駅に行って、今度は夜行電車で京都です。八時間くらいかけて朝に着いたら、今度は時代劇。大変でした。
新人で与えられる本がたくさんあるので、当時は役作りなんて余裕はありませんでした。相手役の名前を別の映画の恋人役と間違えて叱られたこともありました」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2018年12月7日号