私の考える理由を説明しよう。それはパワーカップルが買える限界が坪単価400万円あたりにあるということだ。パワーカップルとは世帯年収が1400万円以上。年収の5倍が7000万円、7倍が9800万円になる。
現状の低金利なら年収の7倍あたりまでは住宅ローンが組める。しかし、余裕を持つなら年収の5倍くらいまで。だから、20坪のマンションを買うのなら坪単価は400万円あたりということになる。
そうした状況の中、今マンションを買うのならどんな物件を選ぶべきなのか──。
結論を言おう。山手線の内側北部で坪単価400万円前後のマンションである。その理由は、同じように坪単価400万円のマンションを買うのなら、通勤ラッシュ時に駅が激混みしていることで人気を落としている川崎市の武蔵小杉よりも、都心バブルにつられて実力以上に価格が跳ね上がった世田谷区よりも、「坪単価400万円の壁」によって頭打ち感の出ている山手線内側北部のマンションの方が、相対的に考えてかなりお得だからである。
私の感覚では、局地バブルによって文京区でもマンション価格は上昇したが、港区ほど派手には上がっていない。なぜなら、上がり過ぎると売れないからである。
「坪単価400万円の壁」とはつまり需要と供給の関係である。坪単価400万円までだったら、実需層の上部にいる方々がついてこられるが、それ以上になるとほんの一握りの高所得層や富裕層にしか買えなくなる。彼らは港区や千代田区では買いたがるが、文京区は値上がりや運用目的では買いにくい。文京区は実需層の市場なのだ。
文京区の他にも注目エリアはある。それは中央区の馬喰町近辺だ。このエリアではここ数年駅徒歩3分以内に小規模な新築マンションがいくつも供給されて、大競合となった。このあたりの新築マンションの相場観は駅徒歩3分以内でも坪単価300万円台前半。局地バブル前の水準とさして変わらない。
ここ4年ほど、新築マンション市場は明らかに局地バブル化した。しかし、需給関係による価格調整は静かに始まっている。バブルの激しい港区や千代田区の一等地では「家賃の50年分」という極端な高価格での売買も見られるが、明らかに不健全だ。
市場の一分で健全な価格形成が見られ始めたことで、この局地バブルもそろそろ“終盤”に入ってきたのではなかろうか。